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社会

点字毎日5000号 記念寄稿

 点字毎日通巻5000号を祝って、5人の方にメッセージを寄せてもらった。

- 元ハンセン病患者の声、励みに 「声の点毎」届けて29年 -

    霊友会法友文庫点字図書館館長 岩上義則(79、全盲)

霊友会法友文庫点字図書館館長 岩上義則さん

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 点字毎日5000号を心からお祝い申し上げます。私が点毎を読み始めたのは、日本点字図書館に就職して間もない23歳の時でした。以来、楽しい話題に胸をときめかせ、悲しいニュースに打ちひしがれて指を走らせる生活です。身の縮む悲惨なニュースは、相次ぐ視覚障害者の駅ホームからの転落事故です。一人歩きが常の私には、このような記事は切なすぎます。

 一番うれしかったのは一昨年、京都府立盲学校が保存する盲教育史の資料が国の重要文化財に指定されたニュースです。まだ点字も算数を学ぶ用具もない草創期に、尽力した先人の知恵と苦悩と成果の歴史が光を浴びるのは誇らしいです。

 最も深く点毎に関わったのは、元ハンセン病の方たちに「声の点字毎日」を届ける事業です。これは、点毎の視覚障害者福祉への貢献が評価されて朝日賞(後の朝日社会福祉賞)を受賞したのを記念して、1968年7月に始まりました。創刊から10年はオープンテープで、東京都立文京盲学校元教諭の故竹村実さんが、1978~2007年まではカセットテープで私が録音しました。今はデイジーCDで作られており、誰でも購読できるようになっています。月に4、5冊発行される点毎をテープ2本に録音し、その月の1日と15日に発行しますが、私は土日の多くの時間を費やしました。発行日に遅れそうになり、早朝4時起きして仕上げたことも懐かしい思い出です。元ハンセン病の読者からお礼状をいただき、生きがいを感じる仕事でした。

 そして2003年、私は邑久光明園(おくこうみょうえん)盲人会創立50周年の祝典に招かれて、「点毎朗読25年を振り返る」と題する講演を行う光栄に預かりました。邑久光明園は、岡山市の東方30㌔の瀬戸内海に浮かぶ風光明媚(めいび)な長島にあります。盲人会会長が元気な声で「館長さんですか? お待ちしていました」と言って出迎えてくださり、2人は旧知の再会のように感激を共有したのでした。

 点毎の更なる充実を期待しています。

ー 打倒AI、ささやかなる抵抗 ー

   NPO法人アジア障害者教育協会理事長 青木陽子(58、全盲)

NPO法人アジア障害者教育協会理事長 青木陽子さん

 「点字毎日」5000号達成! 世界遺産級の快挙だ。1922年から点字新聞の発行を続けて視覚障害者の社会参加を後押ししてきた。経済性や効率が求められる時代にあえて利を捨てる。日本人ならではの愚直さ、信念を貫く姿勢に敬意を表したい。

 音声読み上げソフトやデイジー図書の普及で、近ごろ点字を読むことが少なくなった。音声媒体は便利なツールだが、耳から入る情報は脳をかすめこそすれ、記憶の網にはなかなか引っかからない。おまけに老いの前兆か、音の判別すら怪しくなってきた。中国に渡って日本語学校を開き、そこで教える私には死活問題。そこで「点字毎日」の出番となる。聞き取りが不明瞭な部分を指で確認できるし、思考回路の修復に役立つ。

 中国人への日本語の授業では、通訳教本として活用している。その成果が発揮されるのは、「点毎」とわが校が2018年まで、全国盲学校弁論大会の入賞者と行ってきた日中交流イベントだ。弁士の中国語通訳として吹き替え映画さながらの熱弁を振るわねばならないからである。通訳は単なる言語の置き換えではない。ある人物を演じる役者に似ている。まずは、「点毎」の「ひと」欄を読み、その弁士の人となりを知る。次に、入賞弁論を熟読する。育った環境が違えば、物の見方も異なる。言語行動の相違は最大のバリアーだ。他人の脳内に分け入ることは容易ではない。点字をなぞる指を止めては自問自答し、幾度も読み返して考える。悩み抜いた末に、中国人の心に刺さる素晴らしい訳が生まれるのである。

 「権力に対する人間の戦いとは、忘却に対する記憶の戦いである」とチェコの作家ミラン・クンデラは言う。権力はもとより、人工知能に対する人類の戦いが始まろうとしている。AIごときに支配され、「無用階級」などにおとしめられたくはない。直感力を磨き、自由意思を研ぎ澄まし、確固たる自己を保ち続けていたい。

 ささやかなる抵抗は思考を止めないこと。文字は最強の味方だ。考えることを促し、忘却を食い止めるからである。だから私は、日々指で文字を追う。

ー 祝!5000号!!ー

   山口県立下関南総合支援学校、英語教諭 濱本陽子(55、全盲)

山口県立下関南総合支援学校英語教諭 濱本陽子さん

 5000号の発刊、おめでとうございます。1922年の創刊から98年。一つの物を長く続けるというのは、それだけでとても偉大なことだと思います。98年前といえば日本点字の黎明(れいめい)期。点字出版物の数も現在とは比べものにならないほど少なかったことでしょう。そのような時代に生まれた点字毎日が、当時の視覚障害者にどれほど大きな光と希望を与えたか、察するにあまりあります。

 私が盲学校の生徒だった頃、寄宿舎の談話室には当たり前のように点字毎日がありました。母校の教員となってからも、貴重な情報源として、また大切な教材の一つとして、私の生活を支えてくれています。ありがたいことです。

 激動する世界の中で、視覚障害者を取り巻く環境も刻々と変化しています。私たちが世の中の流れから取り残されないように、旬な話題、役立つ情報を発信し続けていただきたいと思います。末永い繁栄を心から願っています。

ー「広がる世界」ー

  山口県立下関南総合支援学校、理療科教諭 山本美香(38、弱視)

山口県立下関南総合支援学校理療科教諭 山本美香さん

 この度は、5000号発行、おめでとうございます。また、関係者の皆様の努力に対し敬意を表します。

 視覚障害に関する制度から趣味、アプリに至るまで、新たな世界に触れる機会を与えてくださり、感謝いたしております。

 私自身、先輩の濱本陽子教諭とともに2016年4月から2年間、「キッチンコラム」を担当させていただくことで、視覚障害者の食生活や買い物に関心を持ち、多くの方と話すきっかけとなりました。掲載の反響は大きく、激励の言葉やお手紙をいただいたり、新しいキッチングッズを紹介していただいたりしました。このように、たくさんの出会いにつながったこと、ありがたく思っております。

 「点字毎日に載っていたけど……」と、会話がスタートするたび、視覚障害者にとって、なくてはならない情報源であることを痛感いたします。

 今後も、視覚障害者の世界が広がるよう、貴社の一層のご繁栄を心より祈念申し上げます。

ー 全ての人が記事を共有できる点毎に ー

全国視覚障害者情報提供施設協会理事長 竹下亘(わたる)(62)

全国視覚障害者情報提供施設協会理事長 竹下亘さん

 「点毎」5000号の歩みには、98年間にわたるスタッフの献身に加えて、20万㌻を超える紙面に足跡を残した数え切れない視覚障害者と支援者、そしてそれを糧として生きた更に多くの読者があることを思う。

 私は1985年から8年足らず、わずか400号に満たないが、点毎の編集に加わった。その間、多くの視覚障害者や支援者との出会いに恵まれ、それが人生の宝となり、今の仕事の礎となっている。

 中でも忘れられないのは、過酷な差別に耐えて命を輝かせたハンセン病の方々や、人と人とのつながりにより自己実現し、世界を広げた盲ろうの方々との出会いだった。特に97年の新年号で、盲ろうの福島智さんが語った「(生きる上で問われるのは)健常者・障害者という区別を除いて、与えられた条件の中でどう生きるか」であり、「一人一人の人間の生き方の質である」という言葉は私の道しるべになった。これは、人の価値を能力や生産性で測り、津久井やまゆり園でかけがえのない多くの命を奪った青年の誤りを正す最も確かな人間観だと思う。

 ところで、私が誇りに思うのは、理事長を務める団体が受託している島根県の刑務所の受刑者の社会貢献作業として、点毎創刊号からの点字データ化に関われたことだ。現在、1000号までのデータ化が終わり、点毎読者と点訳者の校正を経て、順次サピエに登録されている。長年、読めなかった点毎の原文を多くの人が読めるようになったことは素晴らしい。

 ただし、残念なことに、満州事変から太平洋戦争の敗戦に至る十数年の点毎は、一般紙と同様、軍国主義に引きずり込まれ、次第に侵略戦争と人権抑圧のお先棒を担ぐ内容となっている。5000号を記念する時、こうした紙面の精査と反省も欠かせない課題だと思う。

 最後に、これからの点毎には、視覚障害者にとって唯一無二の文字である点字を基盤としながら、誰もが読めるように墨字、音声、電子版の普及を望む。そして、点毎と毎日新聞本紙の垣根を取り払い、視覚障害者の話題や問題、言論が全ての人に共有されるようになることを願う。20年後、更に進化した点毎6000号の発行を祝いたい。

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