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社説

ALS患者の嘱託殺人 医師として許されぬ行為

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 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う51歳の女性に頼まれ薬物で殺害したとして、医師2人が嘱託殺人容疑で逮捕された。

 女性は寝たきりの状態で、インターネット上に安楽死を願う書き込みをしていた。医師とはネット交流サービス(SNS)を通じてやりとりを続け、計130万円を振り込んでいたという。

 2人の医師は女性の主治医ではない。会ったのは、昨年11月の事件当日だけだった。知人を装って女性宅を訪れ、10分以内に立ち去っていた。

 女性の病状を継続的に把握していたわけではなく、気持ちに寄り添っていた形跡もうかがえない。容疑が事実とすれば、命を軽視していると言わざるを得ず、医師として許されない。

 医師の一人はネット上などで安楽死を肯定する発言をしていた。事件に関するSNSのやりとりを消去するように、女性に指示もしていたという。

 もう一人の医師には、医師免許を不正取得した疑いも出ている。京都府警は捜査を尽くし、動機や経緯を解明してほしい。

 過去にも安楽死を巡る事件はあったが、終末期の患者を病院で治療中に起きている。今回は死期が迫っていたとは言えず、治療もしていない。全く状況が異なり、安楽死や尊厳死の法整備を巡る議論に直接結びつけるべきではない。

 女性は米国留学後、設計事務所で働いていたが、9年前にALSを発症した。症状が進み、ヘルパーの介護を24時間受けていた。

 ネット上には体を動かせず、話すことも食べることもできないつらさや苦しみを書き込んでいた。

 目の動きによるパソコン操作で意思疎通ができるようになり、介護サービスも進みつつある。だが、根本的な治療法はまだなく、精神的な苦痛を和らげる支援の難しさが浮き彫りになっている。

 ALS患者の舩後靖彦参院議員はコメントを発表した。自分の経験が他の患者の役に立つことを知り、生きることを決心したと記した。「『死ぬ権利』よりも『生きる権利』を守る社会にしていくことが何よりも大切」と訴えた。

 難病患者の「生きたい」という思いが、封じ込められるような社会であってはならない。

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