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社説

黒い雨訴訟で原告勝訴 国は広く被害者の救済を

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 広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」で健康被害を受けたにもかかわらず、被爆者として援護対象にならなかったのは不当との住民の訴えが、司法の場で初めて認められた。

 爆心地から約8~29キロの地点にいた住民84人が訴えていた。被爆者援護法に基づき国が定めた援護対象区域から外れていたため、被爆者と認められていなかった。

 広島地裁は、原告全員を被爆者と認め、広島市などに被爆者健康手帳などの交付を命じた。原告の全面勝訴といえる。

 判決はこれまでの調査結果から黒い雨は援護対象区域にとどまらず、広範囲で降ったと認定した。その上で原告らの証言に不自然さはなく、黒い雨に遭ったことを認めた。

 被害地域を極めて狭く定めた国の線引きの不適切さを指摘したもので、国は今回の司法判断を重く受け止めなければならない。

 健康被害が原爆による放射能の影響かどうかも争点だった。

 判決は、黒い雨には放射能による健康被害が生じる可能性があると指摘した。

 さらに影響は直接浴びただけでなく、混入した水を飲むなどして体内に入った放射性物質による「内部被ばく」も想定できると踏み込んだ。

 黒い雨の影響は科学的には未解明な部分が多いとされるが、判決は被害救済を優先した形だ。

 裁判の被告は形式的には手帳交付などを審査する広島市などだったが、実際に問われたのは国の援護行政のあり方だった。

 84人は原爆投下時、生後4カ月~21歳だった。「被爆者と認めてほしい」という思いで提訴に踏み切ったが、5年近くの裁判の間に12人が亡くなった。経済的な理由などから訴訟に参加できなかった人もいた。

 広島に原爆が投下されて今年で75年となる。救済に残された時間は少ない。

 被爆者援護法は「他の戦争被害とは異なる特殊の被害」を受けた人々を救済するために制定された。国はその趣旨に立ち返り被害の実態に目を向ける必要がある。

 裁判でこれ以上争いを続けるのではなく、救済の道を早急に広げるべきだ。

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