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「絶望の先に力強い人生が待っている」 ALS患者の医師「2択ではない」

視線入力パソコンを使いこなしながら医療コンサルタントの仕事をする医師でALS患者の竹田主子さん=東京都内の自宅で2019年9月11日、上東麻子撮影

 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者(51)に頼まれ、薬物を投与して殺害したとして嘱託殺人容疑で医師2人が京都府警に逮捕された事件。一部政治家などからは、安楽死や尊厳死の法整備論議を求める声や、容疑者を擁護する声までもがネット上に飛び交う。こうした世相に心を痛めるALS当事者で医師の竹田主子さん(50)に寄稿してもらった。竹田さんは4年間にわたって、難病ALSの受容に苦しみ、「死」を願ったことすらあるという。そこから「今の時代、ALS患者は無限に活動的になれる」と書けるまでに。命を救う医師であり、ALSの患者でもある竹田さんが事件を知り、視線で入力できるパソコンで一文字一文字つむいだメッセージとは……。【まとめ・上東麻子/統合デジタル取材センター】

 私は内科医として勤務していた7年前にALSを発症しました。ALSは神経の中で運動神経だけが壊れていき、やがて全身が動かなくなる病気です。しゃべることも、食べることも、呼吸することもできなくなります。意識や知能、聴覚、視覚は正常です。この診断を受けて平気な人はいないでしょう。大きなショックを受け、自分が無力で価値のないものに思えます。ALSのようにどんどん身体が動かなくなるのは恐怖ですし、治らないとなると人生に絶望し、死にたくなります。

 でも今は24時間介護を受けて、視線入力パソコンを使い、医療コンサルタントの他、生命倫理や終末期医療について学会や大学で講義を行っています。病気で療養している、という自覚は消えて、たぶん、健康な皆さんと同じ感覚で生活しています。

 そんな私から見ると、この事件は二つの要素があります。一つ目は自殺願望の人間の呼びかけに応じて、ゆがんだ思想を持った医師が、金銭目的で殺人を行ったこと。二つ目は病気を苦に、自殺したい人がいることです。この二つは分けて考えなければいけません。

 報道で見る限り、2容疑者は、高齢者蔑視の発言をしたり、医学的知識を悪用して完全犯罪をもくろみ、「死なせたい“老人”」の殺害方法を書いたり、その目的を達成するために患者さんの意向をでっち上げることをほのめかしたりと、もはや医者の皮を被った凶悪犯罪の容疑者としか思えません。問われるべきは医師の倫理です。他に被害者がいないことを祈るばかりですが、こうした明らかに倫理観が欠如した医師を生み出さないシステムを考えないといけないと思います。

 厚生労働省によると2019年、自殺の理由で一番多いのは健康問題で、9800人以上が亡くなっています。では、今回の事件のような、健康問題を抱える人と自殺したいほど悩んでいる人を、全員法律で自殺可能にしていいのでしょうか?

 私は自分を受容するまでに4年かかりました。発症して7年たち、生きがいである仕事もして、プライベートも充実して、何事もなかったかのように生活していますが、最初は、呼吸器をつけてまで生きたくないと思っていました。

 「子どものた…

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上東麻子

1996年毎日新聞入社。佐賀支局、西部本社、毎日小学生新聞、東京本社くらし医療部などをへて2020年から統合デジタル取材センター。障害福祉、精神医療、差別、性暴力、「境界」に関心がある。日本新聞協会賞を受賞したキャンペーン報道「旧優生保護法を問う」取材班。共著に「強制不妊」(毎日新聞出版)。散歩とヨガ、ものづくりが好き。

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