
米国で黒人男性が白人警官に首を押さえつけられ死亡した事件をきっかけに、人種差別の歴史に関与した記念像を撤去する動きが広がっている。日本でも植民地支配などの「負の歴史」は常に議論を呼んできた。戦後75年の今年、私たちは歴史とどう向き合えばいいのか。
関係築けぬ75年こそ 木村幹・神戸大大学院教授
日本と韓国の間では、元徴用工の強制労働や従軍慰安婦といった戦時中の歴史を巡り確執が続いている。1910年の韓国併合から終戦までの35年にわたる植民地支配は負の歴史だが、それ以上に結局良好な関係を築けなかった戦後の75年間こそ、私たちが向き合うべき負の歴史だと強調したい。
植民地支配はどう転んでも褒められるものではない。経済成長に貢献した等、韓国側に対するメリットを挙げる人もいる。だが参政権も与えられず、自分たちの運命を自分たちで決められなかった体制に不満を持つのは当たり前で、理屈をつけて相手に感謝されようとするのはかなり虫がいい。植民地支配に関する批判的な韓国の教科書の記述が、日本側の期待に沿うことは永遠にないだろう。そもそも異なる国や国民に関する歴史記述は、そ…
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