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社説

特養入所者死亡で無罪 現場の萎縮生まぬように

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 長野県安曇野市の特別養護老人ホームで入所者が死亡したことを巡って、業務上過失致死罪に問われた准看護師に対し、東京高裁が逆転無罪判決を出した。

 介護にミスがあったことを理由に、現場の職員が刑事責任を追及されるのは異例だ。高裁は具体的な状況を細かく検討しており、実態に即した結論だろう。

 准看護師は7年前、間食にドーナツを提供し、誤って飲み込ませ窒息死させたとして起訴された。

 1審判決は、直前にゼリー状の間食への変更が介護職間で決められていたのに、確認を怠ったと判断して罰金20万円を言い渡した。

 高裁は、介護職ではないため変更を知るのは難しかったと認定した。ドーナツで入所者が窒息する危険性は低かったとも指摘した。リスクの予測を広く求めすぎた1審判決は問題があるとの判断だ。

 検察側は1審の公判で起訴内容の変更を2回請求している。もともと捜査が十分でなく、無理な立証を重ねていた可能性が高い。

 准看護師が起訴されたことによって、介護現場が萎縮し、サービスの質が低下するとの声が上がった。1審の有罪判決で懸念はさらに広がった。無罪判決を求める署名が約73万筆も集まった。

 現実に、高齢者施設への影響は表れている。間食を固形のものからゼリー状のものに変えたり、間食の提供自体をやめたりするケースが出ている。

 施設で暮らす人々にとって、食事は楽しみの一つだ。高裁判決も「満足感や安らぎを得るために重要」と言及した。

 入所者の事情に合わせた対応は必要である。ただ、安全を理由に全てを飲み込みやすい食事にしてしまっては、生活の張り合いを奪いかねない。

 高齢者の施設は、さまざまなリスクと隣り合わせだ。通常の仕事をしていたのに、結果の重大さゆえに個人が罪に問われるようなことになれば、介護に関わる職員のなり手はいなくなっていく。

 ただでさえ、介護の現場は深刻な人手不足が続いている。施設が手のかかる人は受け入れないという事態すら招きかねない。

 老後を送る人たちの生きがいを尊重しながら、安全を守る仕組みを考えていく必要がある。

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