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森見登美彦さん「四畳半」その後じゃない続編 異色のコラボレーションに挑む

森見登美彦さんの新作小説「四畳半タイムマシンブルース」

 森見登美彦さんの新作小説「四畳半タイムマシンブルース」(KADOKAWA)が刊行された。さえない大学生の青春を描いた初期の代表作で、アニメ化もされた「四畳半神話大系」の16年ぶりの続編だ。といっても、前作の“その後”を描くのではない。京都を拠点とする劇団「ヨーロッパ企画」の舞台「サマータイムマシン・ブルース」(2001年初演)を原案に、「四畳半神話大系」の個性豊かなキャラクターたちが騒動を繰り広げる演劇との異色のコラボレーション。自身の原点とも言える「大学生もの」に改めて挑んだ森見さんに思いを聞いた。【関雄輔】

 <真夏の京都、大学3回生の「私」が暮らすアパートのエアコンが動かなくなった。悪友の小津がリモコンを壊してしまったのだ。そこに突然、25年後の未来からさえない男子学生を乗せたタイムマシンが現れる。まだ健在だったリモコンを取りに、過去に旅立つ小津ら。しかし、過去の改変が現在の世界に影響を与えてしまうかもしれないと気づき、慌てふためく「私」。好き勝手に過去を変えようとする小津らを止めるため、「私」も過去に向かう――。大学のSF研究会の部室にタイムマシンが現れる「サマータイムマシン・ブルース」のストーリーをそのままに、妖怪と呼ばれる小津、「私」がひそかに心を寄せるヒロインの明石さんら「四畳半神話大系」の登場人物による世界を作り上げた>

 ――「サマータイムマシン・ブルース」の作・演出は上田誠さん(ヨーロッパ企画代表)。上田さんは「四畳半神話大系」や「ペンギン・ハイウェイ」など森見さん原作のアニメの脚本も担当されていますね。

 ◆「四畳半神話大系」のアニメ化(10年)の前に初めてお会いし、それからヨーロッパ企画の舞台を見に行くようになりました。初めて見たのが「あんなに優しかったゴーレム」(08年)。上田さんの作品は舞台ならではの空間作りにとてもこだわっていて、小説と表現の仕方は違いますが、毎回刺激を受けます。2人で会う時は、それぞれ小説と舞台を作る時にどんなことを考えているかなど、わりと真面目な話をすることが多いんです。僕の小説をアニメにしてくれたお返しに、僕も上田さんの舞台を小説にできないかと以前から考えていました。

 ――「サマータイムマシン・ブルース」は、ある大学のSF研究会の物語です。なぜ「四畳半神話大系」のキャラクターで本作を小説化しようと考えたのでしょうか。

 ◆舞台の役者さんたちの魅力に小説で対抗するには、キャラクターの面白さが必要です。「四畳半神話大系」の登場人物なら張り合えるのではないかと思い、オリジナルではなく、既存のキャラを役者のように使うことにしました。上田さんの作品は群像劇で、舞台で見ることを前提とした仕掛けも多く、小説にするのは非常に難しい。その中で「サマータイムマシン・ブルース」なら、演劇的な仕掛けを取り除き、主人公を1人に設定しても、ストーリーが成立するのではないかと考えました。

 ――苦労はありましたか。

 ◆舞台ならではの面白さは翻訳が不可能です。(タイムマシンで移動した先の)昨日のキャラと、今日のキャラを1人の役者さんが早変わりで演じ、そのドタバタを楽しむというようなことが小説ではできません。せりふの面白さも、そのまま文字にしても再現できないということを書きながら痛感しました。舞台のストーリーラインをたどりつつ、登場人物を「四畳半神話大系」のキャラらしく動かすのにも苦労しました。

 ――小説は物語の舞台を、SF研究会の部室から「四畳半神話大系」でおなじみのアパート「下鴨幽水荘」に移しています。「サマータイムマシン・ブルース」は部室だけでしたが、小説では銭湯や古本市など、他の場面が描かれているのが面白かったです。

 ◆演劇と違い、小説はアパートだけの描写ではちょっと物足りない。京都の夏の風景を描きたいという思いもあり、場面…

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残り1943文字(全文3543文字)

関雄輔

2007年入社。福島支局、南相馬通信部を経て、12年1月から大阪本社学芸部。現在は舞台芸術と文芸を担当。学生時代はバックパッカーとして40カ国を旅した。

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