学生3大駅伝の初戦、10月の出雲全日本大学選抜駅伝の中止が決まった。新型コロナウイルスの感染拡大による中止の波は秋以降のスポーツにも及んできた。正月の箱根駅伝で11年続いた3位以内が途切れた名門・東洋大陸上競技部は今季に復権をかけている。主軸の4年生、吉川洋次(22)は「最後の1年が思いもよらない感じになり、悲しい。でも……」。この春、部から離れて故郷に戻り、社会の中で葛藤の日々を送ったからこそ見えてきたものがある。
正月の風物詩として国民的な人気を誇る箱根駅伝でここ10年ほど最も安定した成績を残してきたのが、鉄紺のたすきと「その1秒をけずりだせ」のスローガンで知られる東洋大だ。拠点の寮と練習場は、東京・池袋から東武東上線で約40分下った埼玉・鶴ケ島駅から徒歩10分の川越キャンパス内にある。都心の騒がしさから離れて練習に打ち込める環境で、2009年の第85回大会を皮切りに4度の総合優勝を果たし、11年連続で3位以内を堅持してきた。
強さとともにもう一つのテーマがある。1887年に創立された東洋大の建学の精神は「諸学の基礎は哲学にあり」。OBで09年春に就任した酒井俊幸監督(44)は「本学は物事の見方や考え方を重視する哲学の大学。体育会的な規律よりも自律と自立が大事」と語る。その精神を軸に「将来世界で戦える選手」を意識した育成を図り、男子マラソン前日本記録保持者の設楽悠太(28)や東京五輪マラソン代表の服部勇馬(26)らを輩出してきた。
今季はその真価が問われる。正月の箱根駅伝は12年ぶりに3位以内に入れず、シード権ギリギリの10位と低迷した。当時の4年生たちは「実力のある選手だけに頼る他人任せのチームになっていた」との言葉を残して卒業した。2月下旬以降は新型コロナで日常の行動も制限され、今まで通りの活動は難しくなった。
長距離は厳しい鍛錬を地道に続けなければならない。一人では甘えが出るため集団で練習する。しかし、現状では、集団生活は感染リスクと紙一重でもある。酒井監督は選手を実家…
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毎日新聞東京本社運動部。1983年、埼玉県生まれ。2006年入社。甲府支局、西部運動課を経て、16年から東京本社運動部。リオデジャネイロ五輪を現地取材した。バドミントン、陸上、バレーボールなどを担当。学生時代、184センチの身長を生かそうとバレーに熱中。幼稚園児の長男、次男とバレーのパスをするのが目下の夢。
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