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的川博士の銀河教室

的川博士の銀河教室 608 中国、火星探査機の打ち上げ成功

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天問」の名の由来は詩

 中国はさる7月23日、中国南部の海南島から火星への着陸を目指す探査機「天問1号」を搭載(とうさい)したロケット「長征(ちょうせい)5号」を打ち上げました(写真1、2)。探査機は、およそ36分後に予定の軌道(きどう)に投入され、打ち上げは成功しました。中国は2011年11月に火星探査機をロシアのロケットに載せて打ち上げましたが失敗。今回こそと期待しています。

 「天問1号」は火星の軌道を回り続ける周回機と探査車(ローバー、図)を積んだ着陸機で構成されており、来年2月ごろに火星に到達(とうたつ)した後、探査車を火星表面に着陸させ、地形や地質構造、表面の土壌(どじょう)の特性などを調査します。

 太陽を回る地球と火星の軌道の関係から、火星探査機の打ち上げチャンスはほぼ2年おきにめぐってきます。今年の夏はそのチャンスの時期に当たっており、先日鹿児島県の種子(たねが)島(しま)宇宙センターからアラブ首長国連邦(しゅちょうこくれんぽう)(UAE)の火星探査機「HOPE」が打ち上げられました。続いて今回の中国、7月30日には米国の火星探査機も打ち上げられました。

 中国は昨年、無人の月面探査機を月の裏側に着陸させることに世界で初めて成功し、中国共産党創立100年となる21年に火星にローバーを着陸させ、国威(こくい)の発揚(はつよう)にもつなげたいと考えているのでしょう。

 これまで火星への探査機の軟着陸(なんちゃくりく)と表面の探査は米国しか成功していません。ロシアは旧ソ連時代に、米国より先に火星探査機を打ち上げたのですが失敗が続き、本格的な探査はできませんでした。16年には欧州宇宙機関(おうしゅううちゅうきかん)(ESA)の探査機も着陸に失敗しており、中国が成功できるか、世界が注目しています。

 ローバー部分の名前は世界から公募(こうぼ)しているそうですが、それよりも私がドキッとしたのは、「天問」の名前です。この命名については、「中国の戦国時代の詩人、屈原(くつげん)が宇宙創造伝説などへの疑問をつづった詩に由来し、真理を追究する精神を託(たく)した」と発表されています。

 語源は、中国の昔の詩を編集した「楚辞(そじ)」にあります。ありもしない作り話によって祖国を追われた屈原が、ある壁画(へきが)に触発(しょくはつ)されて、宇宙、人生、政治、伝説、歴史などについてのたくさんの疑問を天に問いかけています。味わいながら読むと、屈原の「人知を超(こ)えた真理の大海の中で生きているという自覚」と、その大海の中で志を果たせず「ちりのように消えていこうとしている一人の男性の泣きたくなるような気持ち」が垣間(かいま)見えます。屈原は、ついには絶望して川に身を投げたといわれます。私の大好きな作品に由来する名前を持つ探査機「天問」。ぜひ成功してほしいと願っています


的川泰宣(まとがわやすのり)さん

 長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。


日本宇宙少年団(YAC)

 年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp


 「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

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