随筆家、白洲正子(1910~98年)が街道筋から外れた村里を巡った紀行『かくれ里』。71年の出版から半世紀を経てなお私たちを魅了する。24章のうち8章が書かれた滋賀で、白洲が時代に問うたものを見つめた。【中本泰代】
64年秋、白洲は東京五輪に沸く世間を尻目に、西国三十三所観音霊場の取材に出た。近江の山の上から、田んぼの中を走る新幹線を見て優越感に浸ったという。「お前さんはすぐ古くなるだろうが、こっちは千数百年を生きた巡礼をしてるんだ、ざまぁ見ろ、といいたい気分であった」(『白洲正子自伝』)。この旅で、白洲は憑(つ)かれたように歩き、日本の信仰を体験した。
その後に取りかかった「かくれ里」は、「芸術新潮」69年1月号から2年にわたり連載された。白洲は近畿と周辺の村里を訪れ、受け継がれてきた能面や仏像、あるいは祭りや伝承、習俗と出合った。風土と折り合い、生命と歴史をつないできた人々の営みに、白洲は信仰の本質を見た。
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