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余録

悲しかり化外の民の如き身を…

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 「悲しかり化外(けがい)の民の如(ごと)き身を異国の短歌(うた)に憑(つ)かれて詠むは/傅彩澄(ふさいちょう)」。日本の植民地時代に日本語教育を受けた台湾人の歌集「台湾万葉集」の一首である。「化外の民」とは中華文明からみた辺境の民のことだ▲訃報が伝えられた李登輝(りとうき)氏も「難しいことは日本語で考える」と公言していた。それはまた先の歌の詠み手が抱く「悲しかり」の気持ちを分かち合う世代ということでもあろう。「台湾人に生まれた悲哀」――李氏はそう語っていた▲日本の統治下で日本陸軍の少尉として終戦を迎え、戦後の国民党による民衆弾圧「2・28事件」を逃れる経験もしたその若き日であった。後年、蔣経国(しょうけいこく)総統の知遇を得て政治経験を積み重ね、その死とともに台湾人初の総統となった▲「台湾人の悲哀」とは、1996年の初の総統直接選挙の2年前、司馬遼太郎(しば・りょうたろう)との対談で語られた。日本も国民党もすべて「外来政権」だったと嘆き、聖書のモーゼの「出エジプト」になぞらえて台湾の「新しい出発」を語ったのだ▲直接選挙へと国民党政権の改革を成し遂げ、中国のミサイル演習の脅しを逆手にとって初の民選総統となった李氏である。民主化を完成させた4年後の総統退任と平和的政権交代の実現は、後に自ら「さよならホームラン」と呼んだ▲香港の自治が危ぶまれる中、あらためて世界の注目を浴びる台湾の民主主義だ。歴史の不条理を自らの運命として引き受け、その悲哀から民主化という果実を生み出して次世代に贈った李氏の生涯だった。

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