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時の在りか

「靖国」など日本の戦後をテーマに取材を続けている伊藤智永編集委員が、政治を「座標軸」に鋭く論じます。

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「もう菅政権になっている」=伊藤智永

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安倍晋三首相が月刊誌で「ポスト安倍の有力候補者の一人」と発言。記者会見で質問され、笑顔を見せる菅義偉官房長官=2020年7月22日、竹内幹撮影
安倍晋三首相が月刊誌で「ポスト安倍の有力候補者の一人」と発言。記者会見で質問され、笑顔を見せる菅義偉官房長官=2020年7月22日、竹内幹撮影

 「Go Toキャンペーン」の条件がコロコロ変わる、遅いと文句を言う(毎日新聞を含む)のは、お門違いというものではないか。

 各地で水害に襲われたり、コロナ危機で仕事がなくなったり、それどころでない人がたくさんいることを思えば、このご時世に旅行ができるだけでもどれほど恵まれた境遇であることか。感染状況が日々変わる以上、東京発着を対象から外すといった程度の混乱も仕方ない。それしきの不便や不公平に文句を言う方が、みみっちく恥ずかしい。

 そんなことより、感染第2波が起きようが、医療・感染症専門家が反対しようが、夏休みが削られ、梅雨が長引き、観光シーズンが到来していないのに、何より「感染症の拡大が収束した後に実施する」と定めた閣議決定に反しているにもかかわらず、それでも旅行に、外食に、催しに出かけようと旗を振る政府の断固たる姿勢に驚くべきだ。

 コロナ対策の政府方針は明らかに転換した。すなわちブレーキもかけながらアクセルを踏み続ける。感染を爆発させない範囲で拡大を許容する。できるかできないかはともかくやるしかない、そう決めた。

 前提には、今さら責任が取れないので決して認めないが、全国一律の休校や緊急事態宣言は、少なくともやり過ぎだったという反省がある。「命より経済が大事か」との批判に対しては、「経済こそ社会の命」という政権の「思想」がある。

 経済とは何か。カネや欲望の追求を超え、生産し、労働し、消費し、遊ぶ、人の活動全て。市場と公共性と福祉、富と貧困、都市過密と地方過疎……。コロナ時代に人が人として人らしく生きる条件、幸福感が問われている。アダム・スミスはまず「道徳感情論」を著し、倫理学を基礎に「国富論」で経済を説いた。

    *    *

 政府のかじを切り、旗を掲げるのは、菅義偉官房長官である。

 「前面に出てきましたね」

 政府高官に水を向けたら、

 「もう菅政権になってるよ」

 さらりと返されぎょっとした。

 「元からだったけど…

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