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(朔出版・1万4300円)
存在の本質を問い続けた「切株」
やませ来るいたちのやうにしなやかに 『瀨頭(せがしら)』
なんとしなやかで、なんとしたたかな俳句かと思う。鬼房(おにふさ)という名とともにあると、いっそう凄(すご)みを帯びて忘れ難い。
「やませ」は夏の季語。冷たく湿った北東の風で、北海道や東北地方にしばしば冷害をもたらすという。飢餓風、凶作風とも。「病ませ」の字も当てられるほど、怖(おそ)れられる風である。
しかしこの句には、そんな厳しさと同時に、いたちの機敏でしなやかな姿態も想像される。「やませ来る」で切れ、すぐさま自然なスピード感をもって起伏する表現の呼吸。句自体が、美しい獣のようだ。鬼房七十一歳の作品。
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