毎日新聞
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9月に予定されていた香港の立法会(議会)選挙が1年間延期された。新型コロナウイルスの感染拡大を理由にしているが、公正な選挙の実施に疑いを抱かせる。
香港国家安全維持法(国安法)の施行後、香港独立の主張などを理由に関係者が逮捕される事件も相次いでいる。延期を民主派つぶしに利用すべきではない。
香港の林鄭月娥(りんていげつが)行政長官は議会の承認を必要とせずに権限を行使できる「緊急状況規則条例」(緊急法)を発動し、延期を決めた。
林鄭氏は「政治的な思惑はない」と強調し、中国政府も支持を表明した。親中派から延期を求める声が出ており、これを受け入れた形だ。国安法への市民の反発を鎮めるために冷却期間を置く思惑もあるとみられている。
一方、民主派は「コロナ禍の政治利用」と反発を強める。7月末までの立候補受け付けでは国安法への反対などを理由に民主派12人が立候補資格を取り消された。急進派6人が排除された前回選挙(2016年)から倍増した。
香港独立の主張や海外勢力との連携だけでなく、政府予算案否決の主張すら立候補資格取り消しの理由にしている。反対派の存在を認めないと言っているに等しい。
昨年、米議会で証言した民主活動家の黄之鋒(こうしほう)氏も立候補を認められなかった。黄氏は「北京は反対派の過半数確保を阻止するためにさまざまな手を使っている」と批判する。
立法会選挙は70議席中35議席だけが直接投票で決まる。民主派に不利な制度だが、昨年11月の区議会(地方議会)選挙圧勝で、過半数獲得が視野に入っていた。
国安法違反での取り締まりも強まる。香港警察はネット上で活動していた独立派団体の学生を逮捕し、海外に出た著名活動家らを指名手配した。民主派は立法会選の延期で弾圧がさらに強化されると警戒する。
米英など欧米諸国も懸念を表明している。米政府は「民主主義のプロセスを損ねる」と延期を批判した。米中対立がいっそう深刻化する可能性も高い。
香港の繁栄には国際社会の信任が不可欠だ。中国も香港政府もこれ以上、香港人の政治の自由を後退させるべきではない。
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