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ブラック・チェンバー・ミュージック

/356 阿部和重 写真・相川博昭

 そうしてみちびきだしたのが、ソガリとおなじスズキ目に属し、新潟の名産魚とされている赤鯥(あかむつ)、通称のどぐろだった。ハナコ(﹅﹅﹅)にとっての思い出の味にどれだけ近づけるかはさだかでないが、こちらも美味なる高級魚と謳(うた)われてはいるから少なくともがっかりさせるようなことはないだろう。

 のどぐろ料理をテイクアウトできる海鮮居酒屋があるとGoogleに教えられ、ハナコ(﹅﹅﹅)の着がえの買いだしがてら横口健二が長岡駅周辺の繁華街へとひとり出かけたのは金曜日の昼すぎだ。病みあがりの彼女をつれて歩くわけにはゆかぬため、男ひとりでショッピングモールをまわりレディースの衣類をまとめて購入するという難行をなし遂げたあとに当の居酒屋を訪れ、串刺しで食べやすそうな塩焼きののどぐろを選んで買って帰った。

 その夜ふたりでのどぐろ塩焼きを食べることは食べたのだが、横口健二は物思いにふけるあまりじっくり味わうのを忘れてしまっていた。「おいしいです」とハナコ(﹅﹅﹅)が感想をもらしてもぼんやりと生返事で応じてしまったのは、宿舎にもどった直後にかいま見た彼女の表情が気になり、それどころではなくなっていたからだ。

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