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「絶望してもやがて幸せ見つけられる」 医師・松永正訓さんが難病患者から学んだこと

松永正訓さん=東京都千代田区で2020年6月24日、宮間俊樹撮影

 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者が2人の医師による薬物投与で死亡した事件。医師2人の逮捕容疑は嘱託殺人だが、女性が安楽死を望んでいた形跡があることも注目されている。小児外科医として、多くの難病患者に寄り添い、命をテーマにした数多くの著作がある医師で作家の松永正訓さん(58)は「どんな状況でも人生を楽しむことはできる」という。難病の子どもたちから学んだという松永さんの処方箋とは……。2回シリーズで掲載します。【大迫麻記子/統合デジタル取材センター】

――2人の医師の逮捕容疑は嘱託殺人ですが、難病や末期がんの患者は、生きるのがつらい時でも生きなければいけないのでしょうか?

 ◆まず、「生きるのがつらい時でも」と言いますが、実際の病気や障害を知らずに意見をしている人が多いと感じます。

 たとえば末期がんですが、今は痛みがひどくてどうにもならない、という状況はほとんどありません。疼痛(とうつう)緩和療法がどんどん進んでいるからです。オピオイド(麻薬性鎮痛薬)の種類は日進月歩で増えています。かつてはモルヒネとフェンタニールの2種類でしたが、今はさまざまな種類が登場しています。薬の種類を変えたり、組み合わせたりすることで、たいていの痛みには対応できるようになっています。

 私は約200人の小児がんの子どもの治療に関わり、うち56人は残念ながら助けることができませんでした。抗がん剤が効かなくなり、呼吸困難が起こるともう打つ手がなく、疼痛緩和療法に入ります。自宅で最期をみとる子には、薬を飲んでもらいます。薬を飲めない子には、貼り薬や点滴で対応します。痛みがあるときにボタンを押すと、自動的に薬を注射する装置もあります。どのような状況でも薬を体に入れることができますし、どうしても痛みが続く場合には、鎮静剤を使って眠らせることもあります。このため、子どもたちが痛みで苦しむことはほとんどありませんでした。

――今回の女性の病気は運動能力がだんだん衰えるALSでした。人の手を借りて生活することや、自殺もできなくなるという状況を恐れる人もいます。

 ◆こわいと思ってしまうのは仕方がないかもしれませんが、だからといって「つらい場合は死ねるようにしましょう」と、医師が致死的な薬物を投与する、いわゆる積極的安楽死をしやすくすべしというような考えに結びつけるのは、あまりにも短絡的です。その前に、病気や障害をもっと受容しやすくなる社会づくりを考えた方がいいからです。

 私が長年付き合ってきた患者の凌雅さんは、ゴーシェ病という先天性の難病を持って生まれてきました。体内の糖脂質を分解する酵素がないため、糖脂質が脳などに蓄積して強いダメージを与えてしまう病気です。凌雅さんは今17歳ですが、人工呼吸器をつけ、全く動けず、薬の影響でほぼ一日中眠っています。

 生後半年で病気が分かった時、両親は「なぜ、自分たちはこんな目に遭うのか」と途方に暮れ、地獄の底に落ちたかのような心境に追い込まれたといいます。リハビリでも良くならない、治療法もない。

 しかし、凌雅さんと家族は少しずつ状況を受容し、今では毎日を楽しみながら暮らしています。凌雅さんの両親は、凌雅さんをストレッチャーに乗せてよく外出します。初めは人の視線を意識してつらかったそうですが、何も悪いことをしているわけではないので、次第に正々堂々と生きていけるようになったといいます。

 病気が治る希望は持てないのですが、両親は凌雅さんを本当に愛情深く育ててきました。お母さんに聞いたら「多くの仲間に出会い、支えられたことに励まされてきた」と話していました。同じ病気の先輩が外出をしている。主治医やヘルパーはどんな時も力になってくれる。特別支援学校の先生は手作りの小道具で、少しでも凌雅さんの反応を引き出してくれようとする。凌雅さん一家は、そうした人たちとのネットワークを築き、支え合いながら生き生きと暮らしています。

――凌雅さん一家が特別ということはありませんか?

 ◆病気や障害を受容するのはとても難しく、時間がかかるのは事実…

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大迫麻記子

1999年入社。暮らしや経済、文化・スポーツを中心に、徹底したユーザー目線で「今」を伝えます。

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