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<火を焚(た)くや枯野の沖を誰か過ぐ><春ひとり槍(やり)投げて槍に歩み寄る>などの句で知られる能村登四郎が俳誌「沖」を創刊して50周年となる。その登四郎作品の全体像を緻密に読み込んだ今瀬剛一の『能村登四郎ノート(二)』(ふらんす堂)が刊行された。「私のライフワーク」という通り、今瀬の主宰誌「対岸」連載の101回から200回までをまとめたもの。句集でいえば『民話』から『易水』まで、中後期の作品と文章を点検している。
そこから新たに見えてくるものがある。老艶さが魅力といわれたが、ことのほか現代感覚に満ちていることだ。<まぼろしの鷹待つこころ岬に立つ><火のごとき咳しづまりし夜半の菊>など。句集『冬の音楽』時代の作品に、「美的な世界を追う試みも多くされている」「対象の美しさ、敬虔(けいけん)なる美、自己描写の哀感、想像の世界の広がりなどを読み取ることは可能」などと書き、従来の「登四郎像」とは一味違う現代俳句的要…
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