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ブラック・チェンバー・ミュージック

/358 阿部和重 写真・相川博昭

「そういえば、娘さんの写真お持ちだったんですね」

「はい。顔写真いちまいだけですが、こっそり持ってくることができました」

 子どものポートレートを親が所持していることじたいは不思議でもなんでもない。それはそうなのだが、この二〇日たらずのあいだハナコ(﹅﹅﹅)がわが子の顔写真を手にしている姿を横口健二は一度も見かけていない。写真をこっそり持ってきたこととなにか関係があるのだろうかと素朴に興味が湧く。

 そんなことを考えているとふと、雨で全身ずぶ濡(ぬ)れになった際のことが思いだされる。いちまいだけしか持ってこられなかった紙焼き写真を肌身はなさず大事に携帯していたのだとすれば、どしゃ降りの最中(さなか)を歩いたせいでふやけてやぶれたりはしなかったのだろうか。それについて「大丈夫でしたか?」と横口健二が訊(たず)ねると、きょとんとなって二秒ほど間があってからハナコ(﹅﹅﹅)はこう答えた。

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