「自分の中の正義感が暴走」 ネット中傷加害者が語る投稿の理由
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「自分の中の『正義』が暴走した感じ」。「直感的に勢いで書いてしまった」。インターネット上で飛び交う心ない攻撃的な言葉は、一体どんな人が、どんな理由で投稿しているのか。実際に誹謗(ひぼう)中傷の書き込みをし、被害者側から発信者情報の開示を求められた20代の男性が毎日新聞の取材に応じた。【牧野宏美/統合デジタル取材センター】
拍子抜けするほど「穏やかで普通の人」
パソコン画面の向こうには、マスクを着け、黒いTシャツ姿でにこやかにほほえむ男性がいる。緊張していた記者は、肩すかしを食らった気がした。近畿地方の自宅とオンライン会議システムでつなぎ、対面したのは7月初旬。「初めまして。えっと、どこから話せばいいですか」。少しぎこちない様子ながら、こちらの顔をしっかりと見て意向を確認する。思いのほか穏やかな雰囲気で、会話は進んだ。
ネット上の誹謗中傷問題を考える上で最も知りたかったのは、なぜ人はあれほど攻撃的で、ひどい言葉を投げかけられるのかという点だ。現実世界で面と向かった時には出てこないであろう罵詈雑言(ばりぞうごん)が、SNS上にはあふれている。その背景を探るためにも、中傷した経験のある「加害者」の話を直接聞きたかった。
取材対象者を探すのは、容易ではなかった。同僚と手分けして加害者側からの相談を受ける弁護士や団体を回って紹介を頼んだが、即座に「無理」と断られたり、こちらの取材意図を理解し、取り次ぎを試みてくれたものの、加害者から「もう忘れたい出来事なので」と拒否されたりした。ある弁護士は「好んで話す人はなかなかいません。ハードルは高いですよ」と話した。
半ばあきらめかけた時、「話してもいい」という加害者が現れた。ただ、ようやく実現する、という思いの一方、どういう思いで取材を受けるのか、私も攻撃的な言葉を浴びせられたらどうしよう、などと警戒する気持ちもあった。身構えていた分、スムーズにやりとりできる「普通の感じ」に逆に戸惑ってしまう。
突然届いた照会書でパニックに 「ネットと現実が一気につながった」
あいさつを終え、こちらから一つずつ、質問を投げかけていく。会社員で、この日は平日だったが、休みだという。取材に応じたのは「ネットユーザーに、軽い気持ちで書き込んでも、大きなペナルティーを科されることがあるので気をつけて、と伝えたいから」とのことだった。
男性にとって衝撃的な出来事が起きたの…
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