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舞台縦横ときどきナナメ

「名前を呼ばれなければ忘れられる」 渡辺えりが「女々しき力」プロジェクトを始動

「さるすべり」の稽古風景。渡辺えり(左)と木野花

 渡辺えりが、気を吐いている。新型コロナウイルスで大きな打撃を受けた演劇界だが、劇場もようやく再開へと動き出した。とはいえ、依然として高い水準で推移する感染者数、劇場での集団感染発生など、日常が戻ってくるまでには、まだまだ時間がかかりそう。そんな中にあって、コロナ禍で断念した「女々しき力」プロジェクトを、「序章」という形で始動させた。コロナで改めて感じたのは「音楽、演劇、映画といったアートは絶対に必要だ」ということ。「自分に対する応援でもあるし、みんなに対する応援でもある」という言葉に演劇人の矜持(きょうじ)がのぞく。

 4本の舞台や稽古(けいこ)が同時進行中だ。5日に東京・高円寺の「座・高円寺1」で幕を開けたのはコロナ禍に書き下ろした新作「さるすべり~コロナノコロ~」(9日まで)。木野花との2人芝居で、共同で演出している。

 「女々しき力」はそもそも、20年前に渡辺が如月小春、岸田理生の2人の女性劇作家と約束していた企画だった。「多くの女性たちに演劇を通して夢と勇気を届け、そのことを私たちの今後の支えにしたい」と、今回は8~10月にかけて、長田育恵、桑原裕子、篠原久美子、瀬戸山美咲といった女性劇作家が結集し、フェスティバル的なプロジェクトを予定していたが、コロナで見送らざるを得なくなった。代わりにプロジェクトの「序章」として「さるすべり」など3本を上演することになったのだ。

 「初めは即興劇で楽しくやろうと思っていたら、木野さんは真面目な人なので『ちゃんと本を書かなきゃだめだよ』と言われて。それぞれ実年齢より10歳上の設定になったので、全学連とかヘルマン・ヘッセなどを調べていて、時間がかかりました」

 物語は、年老いた姉妹2人が主人公。一人は夫の元に帰りたくなくなった専業主婦、もう一人は男性と同じように生きようと思ったが、息子は亡くなり孤独になったという設定だ。その2人に重なるのが「八月の鯨」。映画ではベティ・デイビスとリリアン・ギッシュが老姉妹を演じた。「八月の鯨」を舞台で演じる女優の楽屋のおしゃべりの中で、自分自身なのか、役なのか、脱線しながら、社会の格差や差別などの問題が浮かび上がってくる。

 「女性は人間として認められてこなかった。何かをやりたいのに規制されて、そのこ…

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濱田元子

1989年10月入社。大阪本社学芸部などを経て、2010年から東京本社学芸部。18年から論説委員兼務。担当分野は現代演劇と演芸。年間350本以上の舞台を鑑賞。毎日新聞東京本社夕刊で毎月第4木曜にコラム「日々是・感劇」を連載中。共著に「春風亭一之輔 落語のたくり帖」(自由国民社)。

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