SUNDAY LIBRARY
岡崎 武志・評『チーム・オベリベリ』『サンキュータツオ随筆集 これやこの』ほか
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今週の新刊
◆『チーム・オベリベリ』乃南アサ・著(講談社/税別2300円)
長編小説ではごぶさたと思っていたら、乃南アサはこんな大作に取り組んでいた。『チーム・オベリベリ』は、開化期に北海道へ新天地を求めて入植した人々の話で、事実を基に小説化された大著。
ヒロインの鈴木カネは横浜の女学校を卒業後、牧師だった兄とその仲間が興した「晩成社」という北海道開拓団に参加する。3000万坪を30名で開く。その中心人物の一人、渡辺勝に嫁いだのだが、入植した「オベリベリ」(帯広)は酷寒の原野で、悪戦苦闘の日々が待っていた。
しかも「晩成社」は会社組織で、借金の返済を催促される。牛馬の如(ごと)く土にまみれた元士族の父たちの屈辱はいかばかりか。カネは決して屈せぬ新しい女性で、子を産み、豚を育て、畑に立つ。そして「私たちはここで生きてまいります」と天主に祈るのだ。
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