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公共放送としてサービスの質の低下を招かないか心配だ。
NHKが来年度からの経営計画案を公表した。3年間で事業支出を約500億円削減する。
衛星放送はBS1とBSプレミアム、BS4Kの3チャンネルを二つにし、将来的に一つにすることも検討する。2チャンネルあるAMラジオは一つに集約する。
約7000億円という潤沢な受信料に支えられ、超高精細の4K・8K放送や、インターネットへの番組の常時同時配信などを進めてきた。今回、これまでの業務拡大路線を大きく転換する。
民放からは「肥大化」への批判が高まり、総務省は「業務のスリム化・受信料の見直し・ガバナンスの強化」を求めている。
そうした指摘への「回答」のつもりだろうが、問題が多い。
まず、民放と競合する番組の洗い出しをしないまま、チャンネル数を安易に削減する姿勢には懸念が残る。
衛星では、世界の動きを伝えるニュースや良質なドキュメンタリーへの評価は高い。AMラジオは災害時の重要な情報インフラだ。語学講座もNHKの特色だろう。
公共放送としてどのような番組や業務がふさわしいかを明確にし、目指す将来像を提示すべきではないか。支出抑制のための帳尻合わせであってはならない。
一方、新たな受信料の値下げが計画に盛り込まれなかったことは理解できない。
現在、段階的に値下げを進めており、コロナ禍による新規契約の減少や世帯数減などで受信料が減収傾向にあるというのが理由だ。
しかし業務の見直しと受信料の値下げは本来セットだ。事業規模の削減分は、引き下げるべきだ。
高市早苗総務相もきのう、視聴者への還元を最優先することや、子会社の整理の具体化を求めた。
前田晃伸会長は、地上波と衛星波で契約ごとにそれぞれ徴収している受信料の一本化を検討することを示唆した。
だが、現行の地上波だけを契約している視聴者にとって割高になれば、受け入れられないだろう。
計画案についてはパブリックコメントを受け付けている。視聴者や国民の声に真摯(しんし)に耳を傾けることが求められる。