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湯川豊・評 『一人称単数』=村上春樹・著

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『一人称単数』
『一人称単数』

 (文藝春秋・1650円)

音楽とともに謎を残す短篇集

 『一人称単数』という風変りなタイトルは、この短篇集の最後に置かれた作品の題名でもある。そしてここに収められた八篇の短篇はすべて、「僕」「ぼく」など一人称単数が語り手の小説なのである。

 それでいて、語り手である「僕」なら「僕」は、語る対象である人や物語との距離が一篇ごとに微妙に違っていて、その違いのなかで作家の想像力が力強く、自由に羽ばたいている。その自由さに驚嘆した。

 しかし、それだけに筋立てを要約するのが難しい。たとえば「クリーム」という一篇。

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