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東京へ ともに歩む

毎日新聞

トレーニングに励む山田拓朗=東京都内で2020年8月(日本身体障がい者水泳連盟提供)

パラアスリート交差点

競泳・山田拓朗「変化を恐れない」 自粛期間後「早く泳ぎたい」 蓄積も武器に 

 東京パラリンピックは大きな目標にしていた大会です。延期決定後に緊急事態宣言が発令され、自宅にいる時間が長くなったことで、目標を再設定するためにあえて何もしない時間を作り、気持ちをリセットすることに努めました。

 パラリンピックは過去4大会出場していますが、毎回4年間をかけて新しいものを作り上げ、開催年には一生に一度しかできないほど集中し覚悟を決め臨むものでした。延期によりその流れが崩れ、気持ちを継続していくことに難しさがあったのは確かです。

 延期をネガティブに考えてはいません。ただキャリアも終盤を迎え、来夏の東京大会を集大成として迎えるには、気持ちの部分で準備期間が足りないというのが率直な思いです。個人的にはもう少し先のところに目標を再設定しながらも、東京大会がどのような形となるのか、見守っていきたいと思います。

 外出自粛期間中、多くのアスリートが発信している情報を目にしたり、何人かとは実際に連絡を取り合ったりしていました。考え方はさまざまで、気持ちを切らさず継続性を保ちたいという人や、僕のように一度切り替えたいという人もいました。先行きが見えずに不安を抱えている人も多くいましたが、同じパラ競泳の木村敬一選手や鈴木孝幸選手に焦りはみられず、落ち着いていたのが印象的でした。

 思い返すと、僕たちパラアスリートの世界で予期せぬ事態が起きるのは日常茶飯事です。幼い頃から自分の障害と向き合い壁にぶち当たることもたくさんありました。競技では、障害のクラス分けやルール変更により、自らの努力にかかわらず、チャンスが生まれたり、失われたりすることもあります。2017年にメキシコで開催されるはずだった世界選手権では地震の影響による延期も経験しました。

 これらを乗り越えてきたからこそ、変化に対応する力は自然と鍛えられているのかもしれません。今後も予期せぬ事態に直面するかもしれませんが、状況をよく見て焦ることなく臨機応変に対応していきたいと思っています。

トレーニングに励む山田拓朗=東京都内で2020年8月(日本身体障がい者水泳連盟提供)

 リフレッシュ期間を経た緊急事態宣言解除後は、早く泳ぎたいと思えるようになっていました。約2カ月もプールに入らなかったことは初めてでした。イメージしていたよりも水のかかりなど感覚は悪くありませんでした。全体的には大きな問題はなく少しパワー不足を感じた程度でしたが、連続動作の中ではやや疲労を感じやすく、筋持久力には多少の変化を感じました。

 冒頭のように気持ちの面では難しさはありますが、体力面や技術、経験に関しては当然ながらこれまでの蓄積があります。継続して取り組むポイントは、苦手としているスタートからの15メートルの区間です。スプリンターとしては一番重要ともいえ、記録に大いに影響を与えるため来年に向けて改善を進めていきます。(あすは車いすラグビーの倉橋香衣です)

やまだ・たくろう

 兵庫県三田市出身。先天性の障害で左肘から先がない。競泳男子自由形で短距離が専門。パラリンピックには、日本歴代最年少の13歳で臨んだ2004年アテネ大会から4大会連続出場。16年リオデジャネイロ大会では男子50メートル自由形(運動機能障害S9)で銅メダル。NTTドコモ所属。29歳。