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若き兄弟が並んだ一枚の写真。裏側には「弟 航空隊入隊。別府ニテ」とある。神戸市長田区の建築士、在日コリアン3世の曺弘利(チョホンリ)さん(67)が数年前、親族から手渡されたものだ。写っているのは父・曺外石(ウェソク)さん(撮影当時22歳)と、その弟・曺外徳(ウェドク)さん(同20歳)だ。終戦(朝鮮半島は解放)の前年、兄は徴兵を逃れ、弟は特攻隊に志願した。戦後も2人の間で心の溝が埋まることはなかった。差別や辛苦に遭いながらも、日本社会を生き抜いてきた在日コリアンの3世代、100年にわたるある家族史をたどった。
曺さんの祖父、曺秉元(ピョンウォン)さんは今の韓国全羅北道(チョルラプクト)・南原(ナムウォン)の出身。日本による植民地化が進み、国策企業が「持ち主不明農地の測量」を名目に、朝鮮人の先祖伝来の土地を奪い、移り住んだ日本人に払い下げていた。そのため現地住民は小作農に転落。秉元さんもその一人で生活苦にあえいでいた。
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