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社説

コロナの時代 危機管理のガバナンス 総力いかす体制の構築を

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 新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、政府は社会経済活動を優先するあまり、有効な感染症対策を打ち出せず、立ち往生しているように見える。政治行政システムの問題点を検証し、立て直す必要がある。

 安倍政権はこれまで危機管理に長じた政権と見られてきた。「官邸主導」の政治が、迅速で大胆な決断を可能にするからだ。

 だがコロナ対策では、安倍晋三首相自身が給付金支給やPCR検査体制での「目詰まり」を認めているように、政治と行政は十分に機能していない。

 機能不全を最も象徴しているのは、布マスクの配布だろう。

 首相は4月初め、全国約5000万世帯に布マスクを2枚ずつ配布すると唐突に発表した。「官邸官僚」と呼ばれる首相側近の秘書官が進言したという。

 医療崩壊の懸念が叫ばれていた時期であり、政策の優先順位の間違いは明らかだった。

ちぐはぐな対応に不安

 その後も布マスクに不良品が見つかったり、介護施設にも一律に配布しようとして中止に追い込まれたりするなど、傷口を広げた。

 政権のちぐはぐな対応に、国民が振り回されることが多く、政治への不安と不信が募っている。

 その大きな要因として、厚生労働省をはじめ各省庁、地方自治体、民間の意見が生かされていない問題がある。一部の官僚の発想に頼り、実情を反映しない政策が採用される傾向が強い。

 本来、全国津々浦々の国民の声を届けるべき与党は、動きが鈍い。超長期政権による「安倍1強」状態に慣れてしまったためだ。

 首相官邸と距離のある官僚たちからは「官邸が歓迎しない意見を言い出しにくい雰囲気がある」と萎縮する声が聞こえてくる。

 専門家も位置づけがあいまいだ。役割と責任が明確ではなく、不満を抱えている。

 未知の感染症である以上、意見の違いがあるのは当然だ。それをまとめることができるのは首相しかいない。

 1人10万円の現金給付や、家賃支援策など、野党の対策のほうが迅速で的確なケースも目立った。だが、野党案は直接、採用されることはなかった。国会の議論を軽視し、下請け機関のように扱ってきたツケが、多様な意見を吸い上げることを阻んでいる。

 国と地方の関係も見直す必要がある。

 たとえば、学校の一斉休校では、2009年に新型インフルエンザが流行したのを受け、翌年、国がまとめた総括会議報告書の中に、すでにヒントがある。

 学校などの休業要請については、国が目安を示したうえで、地方自治体が流行状況に応じて運用を判断すべきだと提言している。

国と地方の役割明確に

 しかし、首相は唐突に全国一斉休校を要請した。学校現場だけでなく、子どもを持つ働く親たちも混乱した。当時、緊急事態宣言は出されておらず、首相の要請に法的な根拠はない。首相は基準を示したうえで、最終的な判断を都道府県に促し、それを下支えすべきだったのではないだろうか。

 観光支援策のGo Toトラベルも、国の号令で全国一斉に行うことには無理がある。感染状況も医療体制も地域によって違いが大きいためだ。

 首都圏や近畿圏では、通勤・通学に県境をまたぐことは普通で、生活圏や経済圏を一体で見なければならない。外出自粛や休業の要請は、地方がバラバラに動いていては有効な対策にはならない。広域的な連携が不可欠だ。そうした体制づくりをサポートするのは国の重要な役割のはずだ。

 これまでの経験を踏まえ、新型インフルエンザ等対策特別措置法や感染症法を再点検し、必要な改正をするときだ。特措法に休業補償的な措置を明記することも検討する必要がある。

 PCR検査の体制も不十分だ。医療の縦割り行政を解消し、行政機関から委託を受けなくても、一般病院や診療所、大学病院などが必要と判断される人に幅広く検査をできるようにし、経費を公費でまかなう仕組みが求められる。

 政治行政システムを機能させるためには、首相が指導力を発揮すべきだが、それが見えない。

 コロナ対策に総力をあげて取り組める体制になるよう、危機管理のガバナンスを再構築しなければならない。

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