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人類学の扉を開けて/上 アートとの深い共振探る=秋田公立美術大准教授・石倉敏明

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 人類学は「ヒトとは何か?」を問う、大胆な実践であると思う。人類学者はかつて、未開拓の辺境地に暮らす他者の生活を観察し、珍しい習俗や伝承をめぐって考察した。現代の人類学者の調査地は、もはや辺境に限らず、化学実験室や最先端の医療現場など、広範な領域に拡張されている。ローカルな現実に深く参入し、出来事を体験的に理解しようとするフィールドワークの方法論も、現代では人類学を超えて多くの領域に受け継がれている。

 人類学者は、一見不合理な迷信として軽視されてきた習俗や儀礼に、隠された価値を見いだしてきた。現代の人類学も社会を律する常識にとらわれず、人間と人間以外のさまざまなモノたちとの関係を具体的に捉え直す。この学問は、ローカルな次元で育まれてきた「伝統知」と、グローバルに共有されている「科学知」を繋(つな)ぐ媒介者となってきたのだ。異なる知のシステムは、時に衝突し、干渉し合い、軋轢(あつれき)を生むこと…

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