連載

社説

社説は日々、論説委員が議論を交わして練り上げます。出来事のふり返りにも活用してください。

連載一覧

社説

イスラエル・UAE国交 中東和平につながるのか

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷

 イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交の正常化で合意した。ペルシャ湾岸諸国として初のイスラエルとの国交樹立であり、この動きを前向きに捉えたい。

 仲介役の米国を交えた3カ国の共同声明によると、イスラエルは計画していた占領地ヨルダン川西岸の一部併合を凍結する。数週間以内にイスラエルとUAEが大使館開設などの文書に署名する。

 国連は1947年、パレスチナ地域をユダヤ人国家とアラブ人国家に分割する決議を採択した。イスラエルは翌年、独立を宣言し、反発したアラブ側との間で戦争が繰り返されてきた。

 アラブ諸国で最初に和平を実現したのはエジプトだった。79年に平和条約を結び、続いてヨルダンが94年、平和条約を締結する。その後、四半世紀以上もイスラエルとアラブの間で国交正常化の動きが途絶えたことを考えれば、今回の合意は確かに画期的だ。

 ただ、合意を純粋に喜べない背景もある。中東和平につながるのかという点で疑問が大きいのだ。

 米国のトランプ大統領はこれまで、徹底したイスラエル寄りの姿勢を示し、イスラエルのネタニヤフ首相は対パレスチナで強硬姿勢を崩してこなかった。そのため両指導者に対するアラブ市民の不信は根深い。

 米国のオバマ前政権がイランの核関連活動の制限で合意したことについて、湾岸諸国は核開発を止めるには不十分と反発した。

 トランプ政権が核合意を破棄し、イラン封じ込めに転じたことをUAEは歓迎していた。イスラエルを加えた3カ国には今回の国交正常化を、対イラン包囲網につなげたい思惑もありそうだ。また、この時期の発表からは、トランプ再選の狙いを見ることも容易だ。

 懸念されるのは、国交樹立でパレスチナ側の不満に火が付き、暴力につながることだ。実際、パレスチナ自治政府は合意に反発している。今後湾岸諸国という後ろ盾を失い、和平から取り残されることに強い危機感があるのだ。

 地域安定のためには中東和平の進展は欠かせない。今回の合意を混乱要因としないためにも、国連や日本を含む国際社会はパレスチナを支援することで、中東和平につなげるべきだろう。

あわせて読みたい

この記事の特集・連載

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月