前回に続く夏の怪談として、「ジゼル」に登場する亡霊ウィリについて考える。白煙がたゆたうような群舞は、ロマンチックバレエを象徴する名場面だ。
初演は1841年のパリ。起案者は詩人ゴーティエで、ハイネの著書「ドイツ論」より「雪のように白いウィリが無情に踊り続ける」情景に想を得たという。ウィリとは未婚のまま死んだ娘の霊で、群れをなして若者をつかまえては死の舞踊へと誘い込む。そしてこの伝説は、東欧起源と紹介されている。
ロシアの民間伝承ルサールカ(水辺の妖怪)とウィリの類似を指摘するのは、東京外語大の沼野恭子教授(露文学)だ。ドボルザークの同名オペラは人間に恋をした水の精の悲劇で「人魚姫」に似ているが、土着のルサールカは「森に迷い込んだ男をくすぐり殺したり、水の中に引きずり込んだりする」というからすさまじい。その正体は「恋人に裏切られて死んだ若い娘」。沼野教授によると、恋に破れて水死する女性はカラムジン作「哀れ…
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