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謎の「おない」文化とは?日本社会に鋭くツッコむ京都精華大ウスビ・サコ学長

インタビューに答える京都精華大学のウスビ・サコ学長=京都市左京区で2020年8月6日、菱田諭士撮影

 マリ共和国出身の京都精華大学長、ウスビ・サコさん(54)が新刊「アフリカ出身 サコ学長、日本を語る」(朝日新聞出版、1650円)を出版した。使い慣れた関西弁で日本社会に鋭くツッコみつつ、自由とは何か、教育とは何かを考える。本書に込めた思いをサコ学長に聞いた。【清水有香】

 ――約30人の大所帯で赤の他人も半数近く暮らす家に生まれ、<おまえ誰やねんの世界>で育った。<迷惑かけてなんぼ>の関係が当たり前だったサコ学長が1991年、京都大に進学して出合った日本の謎が「おない」文化だった。例えば相手が同じ年齢と分かればぐっと距離が近づく、あれだ。

 属性が同じ=話が通じ合うと考えることに今も違和感があります。「おない」は小さい頃に同じテレビ番組を見ていないといけない。それだけでパッと通じ合う。私の幼少期は国にテレビもないわけで「知らんがな」って(笑い)。例えば私が講演会で話した後に、「あの話分かる、私も京大なんです」って声をかけられて、なんでそこで共感が生まれんねんって不思議。血液型やえとも同じで、とにかく属性で人を判断することが多い。あるお母さんが私に「うちの子、医学部なんです」って耳打ちで報告してきた時は驚きました。なんで小声やねん!

 ――同じであることに敏感な日本人の気質は「空気を読む」社会にも通じる。それは本当の意味での協調性の否定だと指摘する。

 「日本人は協調性を重んじる」といった美しい日本論がある。私もそれにあこがれた部分がありますが、その協調性をひもとくと、話し合った結果の折り合いではなく「やむを得ず」の面が強い。つまり我慢することが協調性だと定義している。自分は主張しなくても分かってくれるだろうとか、あの人はこう思っているんじゃないかとか、そういう想像の上に成り立つ協調性。本音を語らない日本社会はフィクションで物事が動いてますよね。ほんまにそうなんか、相手に聞いたらいいと思う。

 ――コロナ禍で生まれた自粛警察のような同調圧力も、いわば見せかけの協調性だ。

 そうです。一方的に注意したり怒ったりするのは余裕のなさの表れだと思う。日本は優しい社会だと思っていたけど、その優しさも世間体だった。

 ――2002年に日本国籍を取得。しかし<日本文化に同化するつもりで国籍を取ったわけじゃない>とつづった。

 日本文化の良き理解者として、私から提供できるものもあればいいなと思いました。同じになると、自分が持っているものを捨てないといけない。でもそれは自分の生まれ育った環境とかそこで培った人間関係とか、自分のアイデンティティーを構成するもの。私がウスビ・サコという名前をキープすることで日本の多様性を象徴するような存在になる。私はどうなりたい、どうありたいという本音を出しながら日本社会を生きていきたいと考えました。

 ――18年に学長に就任する際には「違いを可能性に展開する場をつくりたい」と語った。

 今、日本社会では違いがマイナスしか生んでいない。みんな違いを避けようとするから。私はプラスを、選択肢を増やしたい。こういうアイデアも、こういうアプローチもあると本音でぶつかりあって新しいものが生まれればいい。

 ――68年創立の京都精華大は建学理念の一つに「自由自治」を掲げる。学長に就任し、その理念を見つめ直すことから始めたと書いた。

 自由とは何かは大事な問いの一つですが、私…

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清水有香

2006年入社。和歌山支局、編集制作センターを経て13年から大阪本社学芸部。主に美術・ファッションを担当し、育休より復帰後の20年からは文芸・宝塚を中心に取材。ほかに音楽、映画、建築など幅広く関心がある。

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