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社説

コロナの時代 防疫と個人データ 明確な活用ルール確立を

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 新型コロナウイルス対策が長期化する中、防疫のための個人データ活用とプライバシーの保護をどう両立させるかが問われている。

 コロナとの闘いは「情報戦」でもある。専門家は情報通信技術(ICT)を使ったデータ活用の推進を提言するが、課題もある。

 当局が感染状況をいち早く把握し、市民にリスクの所在を知らせることで、いかに感染抑止につなげられるかがカギとなる。

 問題は、政府がこれまでコロナ対策でデータ活用の明確なルールを作ってこなかったことだ。そのため、個人情報の保護と活用を巡る混乱が現場で起きている。

 今春の感染「第1波」では、厚生労働省や自治体などの関係機関が感染者データを十分に共有できない「目詰まり」が起きた。

情報共有に「目詰まり」

 医療機関から保健所への発生届は手書きでファクス送信するアナログ手法が続けられていた。感染者が増えると、クラスター(感染者集団)追跡も担う保健所はパンクし、国がタイムリーに感染状況を把握できなくなった。

 加えて、国と自治体をつなぐシステムは感染者発生を登録するだけで、その後の健康状態や入退院などの情報をフォローできない仕組みだった。これでは病床逼迫(ひっぱく)のリスクを素早く察知できない。

 厚労省は5月末、システムを刷新したが、保健所のある全国155自治体すべてにはつながっていない。自治体ごとに独自の個人情報保護条例があり、個人情報の定義や利用ルールが異なるため、移行に手間取っているという。

 国は新たな取り組みにも乗り出している。感染リスクを通知するスマートフォンアプリ「COCOA(ココア)」の提供を6月から始めた。アプリをダウンロードした人同士が一定時間、近距離にいると、スマホに履歴が残り、感染者が出れば匿名で通知される。

 希望者だけが使う仕組みだが、政府は「多くの国民に普及すれば感染拡大を抑えつつ経済を回す有力なツールになる」と期待している。ただ、ダウンロード数は約1377万件と国民の1割程度にとどまる。効果を発揮するのに必要とされる普及率6割には遠い。

 しかも、アプリは陽性者が自主的に申告して初めて感染リスクが通知される設計だ。申告件数は累計301件に過ぎない。7月以降、全国の感染者数が1日当たり1000人前後にのぼることを踏まえれば、効果を発揮しているとは言い難い。

 西村康稔経済再生担当相は「プライバシーへの配慮は徹底されている」と強調し利用を促している。しかし、飲食店などが感染防止対策で座席数を減らす中、匿名通知でも結果的に陽性者が特定される可能性は残る。政府はより丁寧に説明し理解を求めるべきだ。

プライバシー守る必要

 陽性者の申告が少ない背景には、感染者差別の影響が指摘される。SNS(ネット交流サービス)で身元が暴かれてバッシングにさらされる例が後を絶たない。

 経済界の一部には感染者が出た企業を取引から排除する動きもあるという。感染者のプライバシーを守り、差別をなくす取り組みを徹底する必要がある。

 感染リスクを通知された人がすぐに検査を受けられない点も問題だ。自分が陽性かどうかが迅速に分からないようではアプリを使うメリットは乏しい。

 大阪府などQRコードを使った独自アプリを導入している自治体も多い。ただ、具体的な感染場所まで知らせるかどうかなど運用はまちまちだ。劇場や映画館などでは来場者に氏名や連絡先を登録させる例もあるが、現場任せでは個人情報流出の懸念が拭えない。

 デジタル時代の感染症対策では、ビッグデータの活用も有効な手段となっている。

 ヤフーが利用者の位置情報などを使って分析した繁華街の人出情報は、大型連休中の外出自粛要請の効果検証に役立った。LINEの健康調査には2000万人超が応じ、年代や業種別の感染分布の推計に生かされている。

 いずれも個人を特定しない条件で利用者の協力を得た。官民連携の一つのあり方と言えるだろう。

 プライバシー保護の統一基準さえない状況では、「監視社会」に対する国民の不安は拭えず、協力も得られない。効果的な感染症対策を講じるには、個人データの活用ルールを国が早急に確立する必要がある。

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