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余録

貧しい夫婦のクリスマス…

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 貧しい夫婦のクリスマス。夫は大切な金時計を売って美しい髪の妻に高価なくしを贈り、妻は夫に時計の鎖を贈るために自分の髪を切って売った――おなじみのオー・ヘンリーの短編「賢者の贈り物」である▲「彼らこそ本当の賢者なのです」と作者は物語を結ぶが、その後日談を語る人もいる。夫はふとこんな思いにかられたのだ。「妻の髪の毛はまた生えてくるが、わたしの懐中時計はもうもどってこない!」(「極(きょく)短(たん)小説」新潮文庫)▲クリスマスにはまだ早いが、自分たちの髪を切り、美しい海を守る“賢者の贈り物”にしたモーリシャスの住民たちだった。沿岸で座礁した貨物船「わかしお」から流出した油の回収に、人間の髪の毛が役立っているというのである▲船主、運航会社とも日本企業の同船からは1000トン以上の油が流出した。現場はラムサール条約で指定された湿地帯ポワントデスニーの近くで、希少なマングローブ林に油が広がった。周辺にはサンゴ礁で知られる国立公園もある▲油を吸着する髪の毛はオイルフェンスや油回収具の材料とされ、美容院などから供出された。フランスなど国外からの支援もあったという。日本からは、髪の毛ならぬ新開発の油の吸着材を携えた緊急援助隊の第2陣が現地入りする▲地球からの贈り物ともいえるインド洋の楽園、モーリシャスの海洋生態系である。事故のいわば当事国の市民としては、どうにも肩身が狭い。なんとかその回復につとめながら迎えたい今年のクリスマスだ。

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