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今週の気持ち

今週の気持ちは「川棚の町」

 「女・男の気持ち」(2020年8月13~19日、東京・大阪・西部3本社版計18本)から選んだ「今週の気持ち」は、東京本社版8月15日掲載の投稿です。

  ◆  ◆

<今週の気持ち>

川棚の町 北海道室蘭市・今美幸さん(主婦・60歳)

 もう35年も前、実家のあった根室に住んでいたときのことです。九州へ旅行する私に祖母が1万円札を握らせて「長崎の川棚という町に良次郎の慰霊碑があるから、お酒をあげてきてほしい」と言いました。良次郎は父の兄で、23歳で南洋の島で戦死する前に川棚にもいたそうです。

 そのころの私は、祖母の気持ちもわからない子どもでした。旅行の日程の都合もあり早朝、川棚の駅前で日本酒を買うとタクシーで慰霊碑まで行き、写真を数枚撮りました。帰宅後、プリントした写真は早朝だったせいで薄暗く、慰霊碑だけが写ったものでした。祖母に「どうしてこんなに暗いの」と聞かれ、「根室と違ってお日様が昇るのが遅いんだよ」と返事をしましたが、時間がたつと祖母はまた、同じ質問をします。いつもはこんなことはないのに、と不思議でした。

 一昨年、娘と九州旅行を計画しているとき、祖母のあの質問を思い出しました。そして、祖母は川棚町で過ごした伯父のことを、どんな小さなことでも知りたかったのだとやっと気づき、あの年の秋に逝った祖母に対して、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

 2度目に訪れた川棚は、人は気さくで海も空も青く、佐世保に向かう道沿いには根室の町名と同じ「梅ケ枝」という名前の造り酒屋もありました。伯父さん、きっと気づいてうれしかっただろうね。

  ◆  ◆

<担当記者より>

 19日までの1週間に掲載された「女・男の気持ち」は18本。うち11本が先の戦争にまつわる内容でした。今さんの投稿も、戦争で息子を亡くした祖母の思いをつづったものです。

 23歳の若さで戦死した息子が過ごした川棚(長崎県)。当時は魚雷工場など海軍の重要な施設があった町で、現在は慰霊碑などが残っているそうです。遠く離れた北海道に住むおばあさまは、今さんに息子さんの足跡をたどることを託したのでしょう。

 そんな祖母の思いは、当時20代の孫娘にはわかりません。「決まっていた旅行の日程に無理やり川棚への立ち寄りを加えることになり、大変だと思っていました」と今さんは振り返ります。今さんが慰霊碑を訪れたのは1月の午前6時。長崎は夜明け前です。記念に撮った写真が全部暗かったのは仕方ないことでしたが、おばあさまは残念に思っていたかもしれません。

 その後、今さんは川棚町を再訪。会ったことがない伯父さんに思いをはせることができました。亡くなったおばあさまもきっと喜んでくれているはず。担当記者もホッと一安心しました。

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