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新型コロナウイルスの感染が広がると、再び経済が止まってしまう。それは、NPO法人をはじめ社会活動団体も同じで、彼らが立ち止まると、その活動の先にいる困窮者に手を差し伸べることができなくなる。
こうした団体は、地域に隠れた課題をポジティブに解決するために活動を続けてきた。例えば、高齢者、親子、外国人居住者の支援、山や川の環境を守る取り組みなど、全国にはNPO法人だけでも5万を超える団体がある。(内閣府調べ)。団体の多くは収入が潤沢ではなく、コロナの影響は甚大だ。さらに、人に対面で接しながら支援をしている取り組みは「ソーシャルディスタンス」が行く手を阻む。
社会活動団体が今、一番悩んでいるのは「コロナの影響下でどう活動を再開するか」と「第2波にどう対処するか」。この窮状を現場の視点から打破しようと「Reスタート!」と名付けた無料のオンラインセミナーが企画された。
仕掛け人は、大阪ガス・ソーシャルデザイン室の南貴美子さん(50)。同社は1981年に社会貢献活動「“小さな灯(ともしび)”運動」を始め、約40年にわたって力を注いできた。「コロナ自粛」が始まると、影響を受けたパートナー団体から南さんへの相談が増えた。誰もが初めて直面する状況だが、各団体の悩みは似通っている。「力のない私が一人で応援するより、例えば千人の社員が“応援の一歩”を踏み出す方が大きな力になる」。南さんは社内外へ協力を呼びかけ、課題への対処方法をオンラインでアドバイスできる企画を検討した。
セミナーは全5回で、7月29日~9月2日の毎週水曜日に開催。ウェブ会議システム「Zoom」を使う。地域、障がい者、里親などさまざまな支援活動に取り組む団体の担当者を招き、自粛期間の対応や思いに耳を傾け、資金獲得やボランティアへの配慮など再開に向けた知恵を伝える。既に3回を終えたが、全国から約40人が参加して静かに白熱している。
南さんには原点がある。2011年の東日本大震災。当時、夫婦で何度もボランティアに参加した。多くの命が失われた理不尽さに向き合い、「たった数日のボランティアを繰り返しても何の力にもなれていないのでは?」とも考えた。そんな時、バスに同乗したコーディネーターの言葉に心を打たれた。「微力は無力じゃない」。この一言が彼女の活動を支えている。
たった5回の学びの場では、窮地にある団体の本質的な支えにはならないかもしれない。でも実践を伴う多彩な知恵が、不安に押しつぶされそうな団体の活動に光をもたらすと南さんは信じている。先の見えない世の中だからこそ、仲間を募り、小さな一歩を大きな一歩に変えていく。
◇ ◇
「Reスタート!~“現場のリアル”から考えるwithコロナ時代の『活動再開と第2波対策』~」 第4回は8月26日(多言語センターFACIL・村上桂太郞さん)、第5回は9月2日(日本クリニクラウン協会・熊谷恵利子さん)。いずれも午後7時。参加無料。申し込みはウェブサイト(https://www.osakagas.co.jp/company/tsushin/1288885_15288.html)。
■人物略歴
中川悠(なかがわ・はるか)さん
1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。