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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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 日本の大学のキャンパスをもっと魅力あるものにするよう学術会議が提言したのは、3年前だった。諸外国のその美しさを思えば、国際競争にさらされる今の大学のキャンパス環境の改善に目を向けたのも分かる▲だが、ある英詩人が「この地上に大学より美しいところはない」というのは、大学の塔や建物、芝生の緑のおかげではない。そこが「無知を憎む人が知る努力をし、真実を知る人がそれを伝えようと力を尽くしている場所」だからだ▲この話、ケネディ米大統領が1963年にアメリカン大学で行った演説の前置きである。大学のキャンパスは、新しい知識を求める学生と真理に身をささげる教員とが、行き交い、語らい、学び合い、教え合うことで美しく輝くのだ▲そのキャンパスがコロナ禍で閉ざされ、学生が個々にパソコンと向き合いオンライン授業を受ける現在の大学である。収まらない感染を背景に秋学期も原則オンラインとする方針が相次いで示され、学生から不満や不安の声があがる▲つらいのは、リポートの課題ばかりで、質問もできずにその作成に追われる孤立感のようだ。動画やレジュメだけの授業もあり、施設を使えないのに高い授業料を払う不満も大きい。議論を交わす相手もなく、将来への不安がつのる▲衝撃的なのは、退学を視野に入れて今後を考える学生が1割近いという立命館大学新聞の調査だった。ウィズコロナ時代の大学キャンパスの新しいかたちを探らないことには、この国の知の未来が危うい。

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