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「走る哲学者」462日ぶりレース 故障、コロナ…山県亮太、空白期間の思索

前回のセイコー・ゴールデングランプリ男子100メートルで5位に終わり、悔しそうな表情で電光掲示板を確認する山県亮太=大阪市のヤンマースタジアム長居で2019年5月19日、久保玲撮影

 陸上男子スプリント界を引っ張ってきた山県亮太(28)=セイコー=が、ついに表舞台へ戻ってくる。23日に東京・国立競技場で開かれる「セイコー・ゴールデングランプリ」の男子100メートルは、462日ぶりの復帰レースだ。故障、病気、新型コロナウイルスの感染拡大……。想定外のアクシデントを乗り越えてきた「走る哲学者」は、空白期間に何を考え、何を得たのか。【小林悠太】

 2019年5月19日のセイコー・ゴールデングランプリ以来となるレースを翌日に控えた22日、オンラインで開かれた記者会見。山県は緊張感を漂わせながら決意を語った。「昨季は不本意なシーズンだった。少しでも良い走りができればと思います。昨年のセイコー・ゴールデングランプリ(の男子100メートル)は10秒11。それを上回るタイムを目指して頑張ります」

 ちょうど2年前、山県は心身ともに充実期を迎えていた。8月のジャカルタ・アジア大会では自己タイ記録の10秒00で銅メダルを獲得。18年シーズンは日本選手に一度も先着を許さず、「確実に9秒台を出す」と宣言するほど自信に満ちていた。

 しかし、好事魔多し。19年3月の米フロリダ合宿中、ベッドで寝返りをした際の違和感が最初の兆候だった。背中をねじると痛みが出たが、筋肉や骨の検査を受けても原因がはっきりしない。毎日のようにはり治療を受けたが改善しなかった。4、5月はレースに出場したが、本来の走りにはほど遠く、10秒0台は一度も出なかった。

 「暗闇で必死にあがいているようで非常にしんどい時期だった。一人でいると気持ちが崩れてしまいそうだった」と当時を振り返った山県。気を紛らわせるため、さまざまな知人と会う約束を作り、スケジュールを埋めた。忙しくなるようにあえて引っ越しをしたり、趣味を増やそうとピアノを始めたりもした。

 アクシデントは続いた。19年6月中旬、日本選手権の1週間ほど前だった。街中で突然、胸に痛みを感じた。病院に行くと、気胸と診断された。半月ほどは肺に負担をかけないようにジョギングすらできず、安静にした。「競技につながることは考えたくない」。日本選手権のテレビ中継を見る気にはなれなかった。

 19年9月に予定した二つのレースも、腰と右脚に張りが出たため参加を取りやめた。「踏んだり蹴ったり。周囲や自分自身の期待と実際の結果に大きなギャップがあり、今までで一番試練の年だった」。山県らしい率直な言葉で悔しさを表現した。

 その間に後輩のスプリンターたちが好記録を連発した。サニブラウン・ハキーム(21)は19年6月上旬、9秒97の日本新記録を樹立。その翌月には山県の慶大の後輩でもある小池祐貴(25)=住友電工=が日本選手3人目の9秒台となる9秒98をマークした。

 「自分はアスリートとし…

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小林悠太

毎日新聞東京本社運動部。1983年、埼玉県生まれ。2006年入社。甲府支局、西部運動課を経て、16年から東京本社運動部。リオデジャネイロ五輪を現地取材した。バドミントン、陸上、バレーボールなどを担当。学生時代、184センチの身長を生かそうとバレーに熱中。幼稚園児の長男、次男とバレーのパスをするのが目下の夢。

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