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匿名の刃~SNS暴力考

開示請求で突き止めた中傷投稿の主は…「怒りより恐怖」勝訴にも癒えぬ傷

中傷投稿や裁判の記録を手にする柏木さん。勝訴しても「本当に解決したと言えるのだろうか」という思いがぬぐえないという=東京都内で2020年7月27日、五味香織撮影

 会員制交流サイト(SNS)上の誹謗(ひぼう)中傷によって、被害者が受けるダメージは深刻だ。加害者を突き止め、民事訴訟や刑事手続きを通じ、相手の非が認められたとしても、心の傷は癒えない。ネット上には中傷の書き込みが残り、すべて消すのは容易ではない。ある被害者の女性が、相次ぐ中傷で次第に精神的に追い込まれていくつらい日々を語った。【五味香織/統合デジタル取材センター】

 「このまま電車に飛び込んだら、楽になれるんじゃないか」

 東京都在住の柏木ヘベッカ祐美さん(33)は、通勤途中の駅で電車を待っている時、そんな衝動に駆られた。2年以上にわたって、インターネット掲示板に書き込まれた匿名の中傷に苦しむ中で、死ぬことを考え続けた時期もあった。

 中傷のきっかけは、民放キー局のバラエティー番組への出演だった。公募で集まった女性たちが、へき地などに住む男性たちとお見合いする企画。「結婚に縁があるかもしれない」と思って応募した。1泊2日のロケを経て、2018年1月、柏木さんが好意を持った男性とカップル成立となる様子が放送された。

 ある匿名掲示板では、番組の放送中から「実況」として視聴者の感想が書き込まれていった。放送後も出演者の言動や外見へのコメント、カップルになった男女への意見などが続く中、3日後に柏木さんへの中傷投稿が現れた。

 <ヘベッカは性格悪いよ。よく、あそこまで演技できたな。腹黒>

 まるで知り合いのような書き方だった。翌日以降も、中傷は毎日のように続いた。

 <あざとい><あたしは、この女、嫌い><ヒステリー持ち>――。

 複数の人が中傷に参加しているように見えた。中には柏木さんをかばうような投稿もあったが、その後に「自己弁護しているのではないか」の趣旨の投稿が続いた。

 一連の投稿は約10日間で約30件に上り、やがて別の掲示板にも同じ文面の中傷が転載され始めた。

 一体どんな人が、そして何人が中傷投稿に参加しているのか。柏木さんは、最初に投稿があった掲示板の運営会社にIPアドレス(ネット上の住所に相当する文字列)の開示を求めた。ネット上のトラブルに詳しい小沢一仁弁護士(東京弁護士会)に依頼し、相手を特定する手続きを進めた。

 「知り合いなら、なぜ直接言わず、わざわざネットに書き込むのか。卑劣だ」

 怒りもあったが、相手が誰なのか分からず、怖さと不安が大きかった。何度も掲示板を開いてしまい、眠れない夜が続いた。中傷が始まってから半年たったころ、友人の勧めで心療内科を受診し、抑うつ状態と診断された。

 誰が何のために投稿して…

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五味香織

1998年入社。岐阜支局、中部報道センター、東京社会部、くらし医療部などを経て2020年4月から統合デジタル取材センター。妊娠・出産や子育てをめぐる課題、「生きづらさ」を抱える人たちを中心に取材している。性同一性障害や性分化疾患の>人たちを追ったキャンペーン報道「境界を生きる」、不妊や不育、出生前診断をテーマにした長期連載「こうのとり追って」取材班(いずれも毎日新聞出版より書籍化)。

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