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文芸時評

8月 戦後75年 リアリティーの起点が変容か=田中和生

村上春樹氏

 八月は広島と長崎に原爆が投下された日、また玉音放送が行われた終戦記念日があり、日本ではどうしても一九四五年に終わった戦争を思い起こすことが多い。しかし新型コロナウイルスの影響で、今年はそれらにまつわる式典も規模が縮小され、ウイルスと共存しつつある日常の方が、切実な問題として感じられたように思う。東日本大震災からも一〇年近くが過ぎて、リアリティーの起点が変容しつつあるのかもしれない。

 村上春樹の短篇(たんぺん)集『一人称単数』(文芸春秋)は、そうした気分を敏感に反映したような書きぶりだ。「ぼく」や「僕」や「私」といった一人称で語られた八つの短篇を収めているが、いずれもきわめて個人的な記憶や問題をめぐって書かれている。語り手が国際的な評価が高い作者自身を連想させるせいもあるが、作品の核となっているものがとても小さいと感じられる。

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