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社説

コロナの時代 感染症危機と世界 新たな協調の土台作りを

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 新型コロナウイルスは世界全域をほぼ同時に襲った。国際的に共通の脅威だったが、各国はまず自国の対応に専念した。

 国境を封鎖し、人との距離を保ち、移動を控えるよう求めた。職場が閉鎖され、学校は休校となった。対策はどこも似通っている。

 にもかかわらず、半年を過ぎ、国によって封じ込めの成果に大きな違いが出ている。明暗を分けたのはなんだったのだろう。

 ドイツでは、科学者でもあるメルケル首相が「深刻な状況だ」と訴え、その理由を科学的データを用いて国民に説明した。

 ニュージーランドのアーダン首相は自宅からのオンライン動画で国民と対話を深めた。不安な気持ちに寄り添う姿が印象に残る。

 正確な情報を伝え、国民と危機感を共有する。民主国家として手本となる指導者を国民は信頼し、団結した行動をとった。

対立深める米中の懸念

 同じ民主国家でも、米国の混乱は目を覆うばかりだ。トランプ大統領は当初、「ウイルスはすぐに消える」と根拠もなく豪語した。

 対策は後手に回り、批判されても「私に責任はない」と言い放った。いまや感染者、死者ともに世界最悪を更新し続けている。

 発信源の中国が短期間で大規模な感染を封じ込められたのは、完全な都市封鎖を可能とする強権体制のおかげだという指摘がある。

 しかし、同じ共産党一党独裁のベトナムは市民の自制的な行動で感染を抑えた。ある調査では国民の9割が政府を評価している。

 成否を分けたのは政治体制ではない。政治家が適切なリーダーシップを発揮し、国民と強い信頼関係を築けたかどうかだろう。

 収束が見通せない中、各国が得た教訓と知見は貴重なはずだ。だが、それを持ち寄ることすら阻む壁がそびえる。米中対立である。

 トランプ氏は中国の「情報隠し」が感染拡大を許したと批判し、中国寄りだとして世界保健機関(WHO)を離脱した。

 一方、感染症対策の成果を強調する中国は、「新たな世界基準を確立した」と自画自賛し、米国への対抗心を隠さない。

 主要7カ国では、中国批判を強める米国と欧州の溝が広がり、国連安全保障理事会は米中がにらみ合って機能していない。

 世界の2大国である米中の対立激化は、今後の世界情勢を一変させかねない。とりわけ懸念されるのは国際経済への影響だ。

 国際通貨基金(IMF)は、世界の成長率が急激に失速し、1930年代の世界大恐慌以来の深刻な景気後退に陥ると予測する。

 失業率が悪化すると移民への反発が強まり、ナショナリズムが高揚するおそれがある。排他的な保護主義が加速する懸念も高まる。

 米国は中国を排除するサプライチェーン(供給網)の再編を加速し、中国は新たな市場の開拓で勢力圏の拡大を急いでいる。

 大恐慌後、世界はブロック化が進み、ファシズムが台頭して大戦に至った。その軌跡をたどるようなことがあってはならない。

共通の目的に向かって

 歴史の教訓を生かすには、国際協調を立て直すことが必要だ。世界的な大流行の影響は広範に、しかも長期的に続くだろう。

 足元ではワクチンや治療薬の開発争いが続く。安定した供給体制が整わなければ混乱は避けられまい。製造拠点の分散化が必要だ。

 世界食糧計画(WFP)は、大量失業や農作物の生産と供給の混乱で食糧危機が起き、飢餓が急増すると警鐘を鳴らす。

 気候変動の危機も高まる。景気後退を理由に地球温暖化対策への投資を後回しにしないよう国連が国や企業に警告を発している。

 こうした問題は、国際連携なしには克服できない。その実現には、米中の対立を緩和させ、協調の余地をつくることが急務だ。

 米中間には、衝突につながらないよう継続した話し合いを探る動きがある。緊張緩和に向かうよう日本は積極的に後押しすべきだ。

 米国は飢餓支援の予算を増やしている。欧州連合(EU)は域内全体の復興に取り組んでいる。協力の土台をさらに広げたい。

 コロナ禍で明らかになったのは、地球規模の危機が発生したからといって、直ちに国際的な協力が動き出すわけではないことだ。

 協調の歯車を回すには、各国が共通の脅威にともに対抗するという意識を共有し、強いリーダーシップを発揮する以外にない。

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