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「国会はなぜ軽視されるのか」 “まじめすぎる政治家”が明かす問題の本質 モラル崩壊問題・対談前編

ウェブ会議システム「Zoom」で参加した小川淳也・衆院議員(右上)の話を聞くダースレイダーさん(右下から)、宮台真司・東京都立大教授、大場弘行記者、ジョー横溝さん=深掘TVから

 国会審議中に議員が娯楽小説を読んだり、スマートフォンで趣味のウェブサイトを閲覧したりする行為が横行している。毎日新聞の報道を受け、「援助交際」やオウム真理教問題を社会学の視点で論じて評価された宮台真司・東京都立大教授、小川淳也・衆院議員(無所属/立憲民主党などの統一会派)らが「国会はなぜ軽視されるのか?」をテーマに対談した。話題のドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」で“まじめすぎる政治家”と描かれた小川議員が自身の官僚時代も振り返り、指摘した問題の本質とは――。(※対談は8月5日開かれました)【大場弘行】

 対談はニコニコ動画の「深掘TV」で中継された。辛口の時事評が人気のラジオDJ・ライターのジョー横溝さんとラッパーのダースレイダーさんのほか、国会モラル崩壊の取材を担当した大場も参加した。内容を前編、後編に分けて紹介する。後編は9月2日午前7時に配信予定。

ジョー 大場記者はキャンペーン報道「公文書クライシス」を担当し、6月に出版された「公文書危機 闇に葬られた記録」でも三権分立の行政府の腐敗を暴きました。今回のスクープは三権分立の立法府である国会の腐敗にまつわるものですね。まずは取材のきっかけを教えてください。

きっかけは「ワニ動画」

大場 4月から国会担当になり審議を傍聴しに行くようになりました。すると、議員のスマホいじりが目に余るほどでした。一方で、私が傍聴席でスマートフォンを取り出すと、国会の衛視が飛んできて注意される。あべこべです。この状況は報道しないといけないと思いました。ちょうど、黒川弘務東京高検検事長(当時)の定年延長にからむ検察庁法の改正案の審議が始まり、ネット上で反対意見が相次ぐなど注目を集めていました。まさかここでスマホいじりはないだろうと思いましたが、記者席の目の前で自民党の平井卓也議員がタブレットでワニ動画を見始めました。驚きました。ここまで余裕かと、おぞましさのようなものも感じました。同じ委員会では自民党の大西宏幸議員も小説を堂々と読んでいた。大問題だと思い、カメラを担いで各委員会を渡り歩いていきました。

ジョー そしたら出てくる、出てくるとなったわけですね。小川さん、同じ議員としてどんな感想を持ちますか?

小川 私も事務所との間で連絡するためにスマホを見ることはなくはないんです。反省も含めて、それぞれの議員が国民の厳しい目が注がれているということを改めて意識しなくてはいけないと率直に思いました。もう一つは、まさに検察庁法の改正案のときは、国会内はめちゃくちゃ緊迫していたはずなんです。

ジョー そうでしたね。

小説のタイトル見て「ギャグか?」

小川 私も何度か緊迫する委員会の現場にいたことがあります。傍聴席にもたくさん人がいて、テレビカメラも大量にあるはずなんです。ですから、日常の委員会で気が緩みがちなことを百歩ゆずって理解するにしても、国会で最も緊迫した委員会の一つで、何の危機感もなくそういう行動をとっていることが理解しがたい。限度を超えているなという感想を持ちますね。

ジョー スクープは、ワニ動画から始まりました。他の議員についても見ていきましょう。同じ委員会で大西議員は何の小説を読んでいたのでしょうか?

大場 「皇国の守護者」という戦記小説です。定年延長が問題になった黒川検事長はメディアに「官邸の守護神」と呼ばれていました。撮影した本の写真から読んでいた本が「皇国の守護者」とわかったときは冗談かと思いました。

ジョー ギャグかと?

大場 あの場でこんな本を読んでいることがバレたらどうなるか。そういうリスク感覚のなさにがくぜんとしました。

震災復興審議中の「セサミン」に驚愕

ジョー 立憲民主党の山崎誠議員はスマホで軽自動車の販売サイト、そして、健康商品セサミンの無料モニター登録もしていたそうですね。セサミンということは何か具合でも悪かったんでしょうかね?

ダース セサミンの健康商品はゴマを使ったサプリです。緊急を要するものじゃない。

大場 東日本大震災の復興を審議する委員会でのことでした。震災から10年になろうとしていますが、気が緩んでいる。行政を監視すべき野党議員の行為に驚愕(きょうがく)しました。このほか、自民党の吉川赳議員はコロナ禍で本当に苦しんでいる中小企業の支援につながる法案の審議中に落語の「まくら集」を読んでいました。合間にスマホで自転車の通販サイトを見て、隣の議員と談笑し、席を外してたばこ部屋に行く。戻ってきてまた本を広げる。あきれるとしか言いようがない。元総務相の野田聖子議員はコロナ対策をめぐって緊迫する委員会で「女帝 小池百合子」を熱心に読んでいました。よほど関心があったのでしょう。

ダース 野田さん、小池さんの2人はライバルですからね。

国会に「参加を無意味にする空間」

大場 参院では、自民党の岡田広議員が、就職活動中の学生のデータが企業に売られていた「リクナビ」問題を踏まえた個人情報保護法改正案の審議中に、サスペンス小説「生贄(いけにえ) 私刑執行人」を読んでいた。それから、副法相という立場のある義家弘介議員は、新型コロナウイルス対策のため過去最大の補正予算が審議された本会議で、スパイミステリー小説「戦場のアリス」を熟読していました。こうした行為は氷山の一角です。全部の審議は調査しきれませんし、カメラの撮れないところで本を読んだりスマホをいじったりしている議員はたくさんいます。

宮台 民主主義は、知恵を集めること、つまり、知識社会化が目的の一つです。だから、知恵を集めることに関心のない人には、議員をやる資格がありません。まあ、ご存じのように知恵のない人たちが議員をやっているので、報道されたようなことは当たり前だよと思う方もいるかもしれない。だとしても、こういう営みがまん延していることほど、今の国会の状況をよく表してくれるものはない。つまり、審議に積極的に参加する必要がないのです。むしろ関心をもって積極的に参加しようとしても空回りするような環境が、すでに議会のなかにあります。僕は、議員のモラルよりも、参加を無意味にする空間が国会に広がっていることを、問題にしたい。

三権分立のトップでの体たらく……

ジョー 大場さん、国会とはどういう場所ですか。

大場 国の権力機構は、国会である立法、政府である行政、裁判所である司法と、三つに分けられており、それぞれが監視し合う形でバランスをとっています。これを三権分立といいます。ただ、国会は憲法41条で「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と定められています。

ジョー つまり、三権のうち国会がトップ。

大場 まさに民主主義制度の根幹です。国会の役割は主に四つあります。法律をつくるだけではありません。国の予算をどう配分するかも決めます。また、税金の使われ方や行政がちゃんと運営されているかのチェック、モリカケ問題のような疑惑の解明なども行います。これを行政監視といます。最後に、日本の代表である総理大臣を多数決で選び出すという重要な役割もあります。

ジョー その国会での体たらくですね。国会には1月から6月までの通常国会、それが終わってから12月までに必要に応じて開かれる臨時国会などがあります。今はコロナ禍の中で早く国の対策を決めてほしいので、いろんな人が臨時国会をやってくれと言っているのに、どうやら10月ぐらいまでは開かれそうにない。

国会は行政府にとって「邪魔」

宮台 実は会期制をとっている民主政体の国は、非常にめずらしいのです。普通のビジネスパーソンと同じように、一年中議会が開いているというのが当たり前だということを、知っていてほしいです。安倍(晋三)首相が臨時国会の開催を現時点では拒否していますが、国際標準から考えてそんな振る舞いはあり得ない。安倍首相ならではです。なぜ、日本に会期制があるのかということも、皆さんはよく考えた方がいい。会期制が存在すれば当然、議会の機能は制約されます。つまり、議会の制約が、会期制の目的だということです。

ジョー 会期制にそもそも問題がある?

宮台 めちゃくちゃあります。何で会期制があるのか、理由を説明しろよ、コラッ、て感じです。議会の制約とは、民主主義の力を奪うということです。

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