国会活性化は「まず無能な人材が首相になれないように」宮台真司さん モラル崩壊問題・対談後編

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国会議事堂=本社ヘリから佐々木順一撮影
国会議事堂=本社ヘリから佐々木順一撮影

 国会の審議中に、議員が娯楽小説を読んだり、スマートフォンで趣味のウェブサイトを閲覧したりする行為が横行していると伝えた毎日新聞の報道を受け、社会学者の宮台真司・東京都立大教授や、話題のドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」(http://www.nazekimi.com/)で“まじめすぎる政治家”と描かれた小川淳也・衆院議員(無所属/立憲民主党などの統一会派)らが対談した。その後編を紹介する。小川議員が語る与野党の痛み分けによる問題解決の処方箋、そして宮台教授が語る信用できる政治家の見極め方とは――。(※対談は8月5日開かれました)【大場弘行】

 対談はニコニコ動画の「深掘TV」で中継された。辛口の時事評が人気のラジオDJ・ライターのジョー横溝さんとラッパーのダースレイダーさん、取材を担当した大場も参加した。

問題行為10人中9人が自民党議員はなぜ?

大場 今回の調査で判明した小説を読んだりしていた10人の議員のうち9人は自民党の議員でした。背景に、大きく言って三つの構造的な問題があります。法案の事前審査と定足数制度、そして、国対政治です。一つ目の事前審査は、与党が政府提出法案を事前に審査し、完成品にしてから国会に提出する慣習です。このため、与党議員は国会で議論する必要がなく、通過儀礼になるわけです。

ジョー 事前審査とは、もう法案が国会に出てくる前に、自民党の偉い人たちと官僚が十分ディスカッションしちゃっている。だから、国会で野党が話をする余地はないということですね。詳しく説明してください。

国会を形骸化させるカラクリとは

大場 法案は政府の官僚がまずつくります。それを自民党の部会に持って行きます。ここで法案をもんで、修正したり業界団体の意見を反映させたりして、全会一致で自民党として完成品にします。それを内閣が閣議決定して、国会に提出されます。野党議員ははじめて国会で法案に触れることになりますが、自民党議員は党議拘束もあるので模様眺めです。自民党の部会というのは、党の政務調査会長の下に内閣部会や国防部会などがぶらさがっています。国会の本会議の下にあるような各委員会と同じような構成になっています。問題は、部会が密室だということです。何が議論され、法案がどんな経緯でどう修正されたのかが国民には分からなくなっている。

ジョー 海外では自民党でやっている事前審査制の部分を国会でやっているわけですか?

大場 基本は実質審議として国会でやっているそうです。公文書の観点からも問題があります。私はたくさんの公文書を見てきましたが、省庁側がつくった部会の議事録を見たことがない。党は政党交付金など税金で運営されている面もあるのに、公文書管理の盲点にもなっています。

ダース 事前審査の部分を国会でやれば済む話だと思う。もし、事前審査をこのままやるんだったら、議事の内容を全部透明にしないと、ぼくらの知る権利が守られない。ここで行われている議論こそ、本来ぼくらが知らなきゃいけないこと。でも、自民党のなかでやっていることをぼくらがチェックしなきゃいけないのはおかしい。やっぱり、国会でやってくれっていう話になるはずなんです。

小泉進次郎氏の国会改革は「とんでもない」

小川 自民党内で決まっているんですから、われわれ野党が国会で質問しても、大臣に答えるだけの背景がない。説明能力、説明責任のない人たちが形式上、国会に出てきている。これも国会の形骸化の最たるものだと思います。国会改革が叫ばれて久しい。小泉進次郎(環境相)さんが何年か前に国会改革案としてタブレットを使えるようにしようなどと言っていましたが、とんでもない。やっぱり一番の改革は自民党の事前審査権の放棄。これが最大の改革の入り口だと思います。イギリスの場合、議会は法案が事前審査なしで国会に出てくる。党議拘束も緩いんです。だから、議員が自らの見識と責任において採決に参加する。これが国会を形骸化させない最大の方法だと思います。

大場 次は定足数のルールです。本会議で3分の1、各委員会で2分の1以上の議員が出席していないと議事が成立しないという制度です。与党議員は法案を通すため、質疑に関係なくても座っていないといけない。だからヒマになる。たとえば、国会改革について発言してきた河野太郎防衛相は会見で、審議中に小説を読んだりする行為の背景に「定足数」があるとし「日本の国会は建前重視だ」と指摘しました。定足数を減らすと与党議員の少数意見を聞く機会が減るため弱者の声が届かなくなるという懸念もありますが、河野氏は「国会で定足数をどうすべきか検討すべきだ」と提案しました。小泉氏も、予算委員会で答弁の機会もない大臣が7時間もずっと貼り付けにされていると問題視しています。私は権力を持つ側に都合のいい意見かもしれないと警戒して見ていますが、野党である小川議員も両大臣と同じような意見を持っているのを知って驚きました。

河野太郎氏の指摘は「本末転倒」

小川 河野氏が定足数が問題だというのは本末転倒です。じゃあ、寝てろ、テレビでも見てろという話になりかねない。国会を活性化するには、もうちょっと自由討議の時間を増やす。法案や予算の中身について出席者が挙手をして発言できるようにすればいいのです。確かに予算委員会だと総理以下、閣僚を朝から夕方まで縛り付けているので、国家の危機管理、閣僚の時間やエネルギー配分にとってどうなんだろうと野党ながらも思うことはある。なので、私はそこで与野党は痛みを分けるべきだと思っているんです。与党は事前審査権という隠然たる権力を放棄する。その代わり、野党は朝から晩まで閣僚を縛り付ける国会の日程闘争を放棄する。2時間なら2時間、自由討議を中心とした審議をして、国会を実質化させる。戦後、お互いの利害でできた硬直的な仕組みなので道筋を描くことはできるような気がします。

宮台 今、小川さんの議論に含まれていたフリーディスカッションタイム…

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