メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

「首相が辞任!?」初めて官邸に行った記者 遭遇した安倍政権の幕切れ

首相官邸に入る安倍晋三首相=東京都千代田区で2020年8月28日午前9時58分、竹内幹撮影

 急転直下の辞任表明劇だった。28日に健康問題を理由に辞意を示した安倍晋三首相。当初は2カ月半ぶりに首相の記者会見が開かれると聞き、「これは行かねば」と朝から官邸に足を運んだのだが、思いも寄らぬてんやわんやの状態になった。「官邸の長い一日」で記者が見たものとは――。【生野由佳/統合デジタル取材センター】

 ご存じのように、安倍首相の連続在任日数は、2012年12月に第2次安倍政権発足以降、24日で2799日となり、佐藤栄作元首相を抜いて歴代1位となったばかりだ。第1次政権と合わせた通算在任日数は、19年11月に戦前の桂太郎元首相(2886日)を超えて最長記録を更新している。

 しかし、である。今年に入ってからは新型コロナウイルスで政権の対応への批判が増し、マスコミ各社の世論調査では内閣支持率が低迷していた。さらに、コロナ対策などによる疲労の蓄積が側近から指摘される中、今月17日に続いて24日も東京・信濃町の慶応大病院を訪れ、体調不安が指摘されていた。「首相の口から何が語られるのか」。そんなドキドキ感を抱いて、官邸に向かった。

 午前8時半、空港の保安検査場のようなスペースで金属探知機とX線による身体と荷物検査を受け、入館を許可された。向かった場所は官邸入り口のエントランスホール。よくテレビのニュースなどで映されるあの場所だ。想像していたよりも広く、とても天井が高い。

 午前9時半すぎには、首相の番記者が続々と集まり始めた。閣議が始まる午前10時前には70人近い新聞・テレビの記者やカメラマンでごった返した。

 初めての官邸での取材の緊張感に耐えていた私とは裏腹に、現場の雰囲気はなんだか和やか。ライバル関係ではあるが、各社の記者が雑談をしたり、安倍首相の進退について話題にしたりしている。背後で話していた記者は「僕は辞職はないと思うんですけどね、デスク(上司)はそうは受け取ってなくて……」。政治部記者でも社内で見解は割れているようだった。

 菅義偉官房長官や小泉進次郎環境相、麻生太郎財務相らが続々と到着し、政治部の記者と軽いあいさつを交わし、前を通り過ぎていく。

 午前10時直前、急に慌ただしくなった。床にテープで示された取材ラインに列になって並ぶ。「総理、来ましたね」。誰の公用車かを把握している記者らがささやくと、白色のマスクをつけた安倍首相が姿を現した。

 「バシャッ」「バシャッ」。カメラの大きなシャッター音が断続的に館内に鳴り響く。

 「総理っ、おはようございます!」。番記者がそう問いかけると、歩きながら「おはよう」と軽く右手を上げて応じる。もう一度、声が掛かった。「総理! おはようございます」。安倍首相は再び右手を上げ、そのまますーっと通り過ぎていった。その時間、わずか20秒。

 初めて首相を近くで見る私は、さっそうとした足取りのように思えた。ただ、マスクが顔を覆っているので、顔色がいいとか悪…

この記事は有料記事です。

残り2326文字(全文3535文字)

生野由佳

兵庫県出身。2003年入社。福島支局、阪神支局、大阪社会部、2度目の阪神支局を経て2020年4月より統合デジタル取材センター。JR福知山線脱線事故や阪神大震災を中心に取材してきました。被害者支援や障害福祉分野に関心があります。趣味は銭湯巡り。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. ORICON NEWS 白石麻衣、純白ドレスで10分間の卒業スピーチ「乃木坂46でいられたことを誇りに」

  2. 「限界だった」たった1人の介護の果て なぜ22歳の孫は祖母を手にかけたのか

  3. 議場ではなく「劇場」にいるかと… 新人総理番が見た「代表質問」

  4. #排除する政治~学術会議問題を考える 「発禁処分までほんのひとまたぎ」 作家・村山由佳さんが語る言論の今と伊藤野枝

  5. 講談社の「本」休刊へ 理由の詳細説明は最終・12月号で 76年創刊

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです