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WHO限界露呈⑤いま何が求められているのか? 日仏の気鋭の研究者が分析

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東京都立大学・詫摩佳代教授=本人提供
東京都立大学・詫摩佳代教授=本人提供

 新型コロナウイルスへの対応で、世界から批判を浴びた世界保健機関(WHO)の現状と課題を、日本とフランスの気鋭の研究者2人が分析した。WHOは露呈した限界を克服することができるのか。今、何が求められているのか。

「設立時の理念、今こそ」--詫摩佳代氏(東京都立大教授)

 WHOの現状の制度では、感染症の発生国に強制的に情報を提供させることができない。新型コロナウイルスの初動対応では中国からの情報提供に依拠せざるを得なかった部分があり、だからこそWHOは中国を称賛することで情報を引き出そうとしたのだろう。

 WHO内部では、中国の対応の遅さや必要な情報が十分に上がってこないことへのいらだちが募っていたとされる。しかし、理由はどうであれ、中国を称賛したことで、世界に対して1月末の段階で「中国でウイルスは封じ込められている」という誤ったメッセージを発してしまった。WHOを舞台とする米中の対立が深まってきた一因もそこにあるだろう。

 WHOをはじめとする国際機関の権限は、加盟国が合意して決めていくものだ。国際機関に強い権限を持たせると、国家の主権を侵害される恐れもあるので、多くの場合、権限の強化に賛成する国は少ない。しかし、今回のコロナ対応では、あまりにもWHOにできることが限られている現状が露呈した。今後も感染症が対応力に優れた国で発生するとは限らず、WHOの権限強化が課題となるだろう。フランスとドイツが中心となって作成したWHOの改革案でも、初動対応における発生国の義務をより厳しくすることが提案されたと報じられている。加盟国がどこまで合意できるかが焦点となる。

 また、トランプ米大統領の脱退宣言とともに、WHOの財源不足の問題も注目されている。加盟国の分担金は、1980年代のエイズへの対応が遅れたことなどで、WHOへの信頼が低下したのに伴い、減少してきた。現在、WHOの歳入に占める加盟国の分担金の割合は4分の1にも満たない。WHO改革の一環として加盟国の分担金を引き上げる案も出ているが、信頼回復の問題とともに議論しなければならないだろう。

 米国の去就は11月の大統領選次第だが、米国の代わりに中国が勢力を伸ばそうとしている。中国はこれまでの保健分野での協力で、情報の透明性や人権の尊重などの規範を迂回(うかい)する姿勢が見られている。そんな中、日本や欧州など民主主義の先進国の役割がますます重要になる。

 これまでのコロナ対応を振り返っても、ワクチンを巡る国際協力の枠組みや具体的なWHOの改革案を提案したのは欧州などの先進国だった。日本も継続的にWHOに資金協力してきた実績がある。一方で、途上国は自国の対応に精いっぱいで、WHOをどう改革していくかというところまでは手が回らないところも多い。主要7カ国(G7)をはじめとする民主主義の先進国が、いかにWHOを中心とする…

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