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「私の家政夫ナギサさん」人気のわけ 「逃げ恥」から続くメッセージで女性の固定観念を打ち破る

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9月1日放送の最終回の一場面。メイ(多部未華子、右)は田所優太(瀬戸康史)に自分の正直な気持ちを打ち明ける=TBS提供
9月1日放送の最終回の一場面。メイ(多部未華子、右)は田所優太(瀬戸康史)に自分の正直な気持ちを打ち明ける=TBS提供

 多部未華子が主演するTBS系の火曜ドラマ「私の家政夫ナギサさん」(火曜午後10時)が9月1日の最終回を前に、盛り上がりを見せている。第5話(8月4日放送)から番組平均世帯視聴率が右肩上がりで番組最高を更新し続け、第8話(8月25日放送)には16・7%(以下、視聴率は全て関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録。すでに今から「もう最終回、寂しい」などの声がネット上にあふれている。登場人物はみんないい人ばかりの、一見お気楽なラブコメディーに見えるドラマだが、そこには多くの女性の心を捉えた“メッセージ”があるのかもしれない。番組制作者や研究者に話を聞き、「わたナギ」の人気のわけを考えてみた。【大沢瑞季】

 MR(医薬情報担当者)としてバリバリ働くメイ(多部)は、28歳の誕生日に妹の唯(趣里)から、家事を完璧にこなすスーパー家政夫の「ナギサさん」こと鴫野ナギサ(大森南朋)のお試し利用をプレゼントされる。家事が全くできず、部屋は脱ぎ散らかした衣服や、箱に入ったままの荷物で散らかり放題。そんな姉の生活を心配したのだ。「おじさんが家にいるなんて、絶対イヤ」と最初は拒絶するものの、温かい料理に、整理整頓された部屋、そして仕事で失敗した時も「あなたは本当に頑張っています」と自分を丸ごと認めてくれるナギサさんを次第に受け入れていく。ツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)では、視聴者からも「毎週、癒やされる」などの声が上がる。

 7月7日放送の初回から、平均世帯視聴率14・2%と好発進。同じ火曜ドラマ枠で、最終回20・8%を記録した「逃げるは恥だが役に立つ」(2016年10~12月)は初回は10・2%で、ここまではほとんどの回で「逃げ恥」を上回る高視聴率を記録してきた。

 第8話では、メイは、告白されたライバル会社のMRである田所優太(瀬戸康史)の思いに向き合い、自分が手放してはいけない人は誰かを自問する。そんな時、ナギサさんは本社への異動が決まり、メイの家で働くことができなくなる。ナギサさんから、最後の勤務を告げられたメイは、誰が自分にとって必要な存在かに気付き、ナギサさんに「トライアルで私と結婚生活を送りませんか?」と提案。最終回はメイとナギサさんの「トライアル結婚生活」が始まるが、メイは公私にわたって荒波に襲われることになる。

バリバリ働く女性にとっての癒やしを描きたかった

 「ここまで視聴率を取るとは思っておらず、予想外だった」。そう話すのは、原作漫画のドラマ化を企画したTBSテレビ編成担当の松本友香さん(28)。松本さんはメイと同い年。キャスティング、脚本作りなどに携わった。散らかった部屋をナギサさんが掃除すると、同じリップスティックが10本も出てくるエピソードは、松本さんの実体験に基づいたもの。働く女性を分析している広告大手「博報堂」の社内プロジェクト「キャリジョ研」のスタッフにもインタビュー。疲れてメークを落とさず寝てしまったり、洗い物がたまっていたり……といった「働く女性あるある」を脚本に盛り込んだ。

 ドラマは、「家事は女性がするもの」という考えに縛られがちな社会に対し、そこから抜け出し「家事を外注してもいい」「男性の家政夫がいたっていい」などという多様性を認めてもいいんだよというメッセージを送っている。

 松本さんは「女性が男性の家政夫を雇うという、多様性を受け入れた、時代の半歩先を行く設定にすることで、バリバリ働く女性にとっての癒やしを描きたかった。SNSでは、衣食住にこだわる丁寧な暮らしが発信されて注目されるが、働く女性にとっては、そうは言ってられない現実がある。あるあると共感できるドラマを作りたかった」と話す。SNSでは、主人公への共感だけではなく、「私もナギサさんに来てほしい」という意見も多く、「共感だけでなく、そこから一歩踏み込んだ憧れを感じている人が多いようだ」と話す。

 この火曜ドラマ枠は、女性がターゲット。派遣切りにあったヒロイン(新垣結衣)が、恋愛経験のない独身サラリーマン(星野源)宅で家事代行人として雇われる「逃げるは恥だが役に立つ」、定時退社を続けるヒロイン(吉高由里子)を通してさまざまな働き方の問題を描いた「わたし、定時で帰ります。」などをこれまで放送してきた。「私の家政夫ナギサさん」も、20~30代女性の視聴率が特に高いという。

「逃げ恥」から続くメッセージ

 「逃げ恥」は、ヒロインが家事労働の対…

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