「だいじょうぶ」キャンペーン 在宅避難を考える

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新型コロナウイルス対策のため間隔を空けて避難所で過ごす被災者ら=熊本県人吉市で2020年7月5日、望月亮一撮影 拡大
新型コロナウイルス対策のため間隔を空けて避難所で過ごす被災者ら=熊本県人吉市で2020年7月5日、望月亮一撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大が私たちに考え方の転換を迫っているのは、普段の暮らしにとどまりません。地震、豪雨といった災害時の避難のあり方にも及びます。全国で防災教育に取り組んでいる神戸市のNPO法人「プラス・アーツ」理事長の永田宏和さんは「今こそ在宅避難を考えてほしい」と唱え、ポイントは物品の適切な備蓄と家具の転倒防止だと訴えています。防災の日(9月1日)を前に、永田さんに話を聞きました。【川上克己】

備蓄品、量も大事 NPO法人「プラス・アーツ」永田宏和理事長

 
 

 ――在宅避難を推奨する背景は?

 ◆災害時に身を寄せる施設として、ほとんどの人が「避難所」を真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか。でも、そうした意識は、新型コロナウイルスの感染拡大で見直しを迫られました。体育館や公民館といった避難所に人が殺到すればクラスター(感染者集団)が発生するリスクがそれだけ高まるからです。

 ――避難所に駆け込めば安心だという思い込みがあります。

 ◆避難所だけが避難先だと考えるべきではありません。自治体が出す情報や食料、水などの供給スケジュールは避難所で発表されますから、避難所への登録は必要ですが、住み慣れた自宅での避難をベースに、それができなければ親戚や知人を頼れるかどうか考える。あるいは安全な場所を確保して自動車で車中泊する、テント生活するというように、いくつもの避難先を想定し、準備しておくことが命を守ります。

 多くの人がそうした「分散避難」の備えをしておけば、家が倒壊したり浸水したりするなど、本当に必要な人に避難所を使ってもらうことができますし、避難所が過密状態にならないようにできるかもしれません。在宅避難は自分や家族を守ることになり、地域への貢献にもなります。

永田宏和 NPO法人「プラス・アーツ」理事長 拡大
永田宏和 NPO法人「プラス・アーツ」理事長

 ――在宅避難のポイントは?

 ◆ハザードマップを確認しておくことです。「ハザードマップポータルサイト」でインターネット検索し、自分の住所を入力すれば浸水域に入っているかどうかなどが分かります。住まいの耐震性能も調べておいてください。結果を踏まえて、家を補強するなどの対策も取れます。

 ――在宅避難に必要な物は?

 ◆在宅避難は長期戦です。備えておく物も重要ですが、量も大事です。たとえば4人家族の場合、飲料水は1週間分として2リットル入りペットボトル6本詰めの箱で5箱必要です。口腔(こうくう)ケア用のウエットタオル100枚入りボトル7本、トイレットペーパー3パック――など量の確保が必要です。

 備蓄品は非常食に関心が向きがちですが、日用品も大切です。リストは、プラス・アーツのサイト(http://www.jishin−itsumo.com/)で紹介しています。備蓄は「ローリングストック法」がお薦めです。普段から使ったり食べたりして、その分を買い足して補充する。そうすれば新しいものと入れ替えられますし、十分な量を日ごろから備えておくことができます。

家具の転倒防ごう

 ――水や食料などの備蓄の次に重要なポイントは?

 ◆家のなかに、生活できる空間を確保することです。せっかく家そのものが無事で、水や食料などを十分に備蓄してあっても、地震で家のなかが散乱していたり、危険な状態になっていたりしたら在宅避難はできません。

 震災後、居住空間を確保するポイントは、家具の転倒を防ぐことです。大地震に襲われても、自宅のあちこちに配置した家具が倒れたり、本や割れた食器が散乱したりするのを防ぐのです。家具の固定は大仕事になりそうで、ついつい腰が重くなりますが、「いつかやろう」ではなくて、「いまやろう」です。

 大地震では、家具やテレビがすさまじい勢いで飛んできて、家族に大けがをさせてしまう危険な道具に一変してしまいかねません。病院の機能もまひしてしまうおそれがあるので、けがをしないような備えが非常に重要になります。

 ――どうすれば家具が倒れませんか?

 ◆それだけを使った場合、最も効果があるとされているのは、L形金具で家具の上部と壁の2カ所をネジで留める方法です。壁の素材が石こうボードの場合は、壁の裏側にある間柱(まばしら)を探し、2本の間柱に横板を渡して取り付け、その上からL形金具をネジで固定してください。

 家具の両端と天井との間にポール式器具を設置し、さらに床に粘着マットを敷くか、家具を壁側に傾けるストッパーを敷く方法も、同じような効果を期待できます。壁に穴を開けにくい賃貸住宅などでよく使われる方法です。

 ――身近にあるもので家具の転倒を防ぐ方法はありますか?

 ◆段ボールと市販の滑り止めシートを使う方法があります。段ボールの底に粘着マットを貼り、タンスの上に設置します。タンスが動かないように、段ボールと天井との隙間(すきま)は2センチ以内にするのが肝要です。さらに、滑り止めシートを床に敷きます。こうすることでL形金具を取り付けたのとほぼ同じ効果があります。

 滑り止めシートは食器棚に敷くと、食器同士がぶつかって割れたり、棚から飛び出したりするのを抑えてくれます。割れた食器が床に散らばると、避難経路を塞いでしまいますし、けがも招いてしまいます。

 家具の配置も大切です。タンスや本棚は、ベッドの上や、ドアの前に倒れない向きや場所に設置してください。とくに寝室にはできるだけ物を置かないよう心がけてください。


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やさしく「備え」解説

 プラス・アーツが監修した「防災イツモマニュアル」(ポプラ社・1320円)が今月から書店に並んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大という新しい社会状況を踏まえ、「在宅避難」を呼びかけるとともに、そのためにはどんなものを備えておけばいいか、やさしい文章とイラストで詳しく紹介しています。


「地域安全マップ教室」では犯罪学の権威、小宮信夫・立正大学教授(左端)が安全な場所、危険な場所の見分け方を教えている=2015年、遠山和彦撮影 拡大
「地域安全マップ教室」では犯罪学の権威、小宮信夫・立正大学教授(左端)が安全な場所、危険な場所の見分け方を教えている=2015年、遠山和彦撮影

「だいじょうぶ」キャンペーンとは――

 犯罪や事故といった「こわいもの」から子どもたちやお年寄りを守り、「だいじょうぶ?」とお互いに声を掛け合える社会の実現を目指した運動です。2007年に始まり、防犯、防災、交通安全の三つを柱にしています。ロゴマークは「行政」「企業・団体」「市民」の三つの輪をかたどり、「安心・安全の輪をもっと大きく」という願いを込めました。子どもたちが、犯罪に巻き込まれる恐れのある危険な場所と、安全な場所をどう見分けたらいいかを学ぶ「地域安全マップ教室」を開くなど、全国で各種の事業、イベントを展開しています。


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 「だいじょうぶ」キャンペーンのホームページ(http://daijyoubu−campaign.com/)または「だいじょうぶ」キャンペーンで検索


主催

「だいじょうぶ」キャンペーン実行委員会

(野田健会長・元警視総監、元内閣危機管理監、原子力損害賠償・廃炉等支援機構副理事長/事務局 毎日新聞社)

共催

全国防犯協会連合会、全日本交通安全協会

日本消防協会、全国防災協会、日本河川協会

日本道路協会、都市計画協会、全国警備業協会

日本防犯設備協会、ラジオ福島、毎日新聞社

後援

内閣府、警察庁、文部科学省

国土交通省、消防庁、海上保安庁

東京都、NHK

協賛

JR東日本

セコム

東京海上日動

協力

地域安全マップ協会

プラス・アーツ

情報セキュリティ研究所


 ■人物略歴

永田宏和(ながた・ひろかず)さん

 1968年兵庫県生まれ。93年大阪大学大学院修了。2005年楽しく学べる防災訓練「イザ!カエルキャラバン!」を開発後、NPO法人「プラス・アーツ」設立。日本全国をはじめ、世界21カ国で防災教育の普及に取り組んでいるほか、インフラ企業、メディアなどの防災プロジェクトを数多く手掛ける。=写真は本人提供

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