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ダイヤモンド・プリンセス号の実相

検疫活動は「災害」か 大型客船の医療崩壊防いだ「神奈川モデル」

朝のミーティングで説明する阿南英明医師=横浜市中区で2020年8月26日、吉田航太撮影

 8月26日午前9時半、神奈川県庁本庁舎大会議室で行われた新型コロナウイルス感染症対策の朝ミーティングは、拍手と笑い声から始まった。取り仕切る阿南英明医師(医療危機対策統括官)が冒頭、前日が誕生日だったことを報告したからだ。すかさず、何回目ですか、と声がかかる。「55回目!」。また拍手。「どうでもいいけどね。じゃあ、始めようか!」

 10日ほど前、対策本部は緊迫していた。神奈川県では15日、1日としては過去最多となる136人の感染が判明。医療体制はぎりぎり持ちこたえていたが、予断を許さない状況だった。

 それでも、各担当リーダーたち約50人が週3回集まるミーティングは前向きな雰囲気。役所特有の「できない理由」が述べ立てられることはない。困難な療養施設の確保や医師会との連携にしても、何をすれば実現可能か知恵を出し合う。1時間きっかりで終了。あとは個別のテーマごとに、小さなミーティングを繰り返す。喫緊の課題は、今冬、症状の見分けがつきにくいインフルエンザと新型コロナ感染症にどう対処するかだ。阿南は言う。「ダイヤモンド・プリンセスから半年。やっとここまで来た。課題は山ほどあり、時間はあまりない」

 今年2月、2週間ほどの東南アジア・クルーズを終えて横浜港に戻ってきた全長290メートルの大型客船の乗客から、新型コロナウイルスの感染者が見つかった。船内で感染が拡大しているのは確実だった。3711人の乗客・乗員の命をいかにして守るのか。船内活動の主力となったのは、阿南が調整官を務めていた神奈川DMAT(災害派遣医療チーム)だ。

 絶望的な状況の下、彼らはもがきながら「神奈川モデル」と呼ばれる、医療崩壊を起こさないための仕組みを構築していった。このモデルはそのあと全国のコロナ対策の下敷きになる。阿南と、彼と行動を共にした仲間たちの記憶から、半年前の危機の知られざる実相に迫りたい。(敬称略)【専門編集委員・滝野隆浩】

大混乱の現場に慣れたDMAT 派遣根拠は

 2月4日午後10時すぎ。阿南英明(55)=神奈川県医療危機対策統括官=は埼玉県所沢市のビジネスホテルにいた。頼まれた講演を終え、関係者と飲食して帰り着いたばかり。テレビをつけたら、横浜港に停泊中の客船で検疫が行われているというニュースをやっていた。シャワーでも浴びようと思ったとき、スマートフォンに着信があった。

 表示は「神奈川県健康危機管理課」。嫌な予感がした。だがそのときはまだ、テレビニュースの現場…

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