
7月4日、熊本県を襲った記録的な豪雨で球磨川が氾濫し、多くの人命が失われるなど甚大な被害が出た。球磨川水系では最大の支流に国が計画した川辺川ダム建設が2009年に中止され、ダム無しの治水策がまとまらずに協議が続く中で今回の水害が起きた。そのためダム建設計画復活の動きが予想される。
ただ今後の治水対策は今回の水害をきちんと検証した上で、地球温暖化によりさらに激甚化が予想される豪雨も考慮して決めるべきだ。29年前に毎日新聞熊本版で私が執筆した連載がきっかけで計画の見直しを求める住民運動が始まるなどダム建設反対の世論形成に一定の役割を果たした者として、今回の水害をどうとらえているのか記したい。
今回の洪水の最大流量が、既設ダムの効果を見込んで川辺川ダム計画で想定されていた人吉市地点毎秒6600立方メートル(以後トンで代用)、八代市横石地点毎秒8600トンを大きく超えていたのは確実だ。水害前に何度も現地を視察している今本博健・京都大名誉教授(河川工学)が水位と過去の流量データなどから推定した流量は人吉毎秒約8500トン、横石毎秒約1万トン。いずれも計算値の下限に近い値を採用しており、これ…
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