防災週間が始まり、南海トラフ地震などを想定した防災訓練が各地で行われている。
こうした大災害では、避難所や仮設住宅が不足する事態も懸念される。多くの住民が壊れた自宅で生活を続けることを前提にした支援の仕組みを整える必要がある。
その一歩となる制度の見直し案を政府がまとめた。被災した住宅の再建にあたって、公費で支援する対象範囲を拡大する。
「全壊」や「大規模半壊」に限っていた支援対象に「半壊」の一部を加える。
被災者生活再建支援法に基づき、これまで全壊は最大300万円、大規模半壊は最大250万円が支給されてきた。
しかし、東日本大震災などでは、多くの被災者が修繕費を捻出できず、壊れた家にブルーシートを張って住み続けた。支援の範囲や金額が不十分だとの批判がたびたび起きた。
見直し案では、半壊のうち「住宅の損害割合が30%以上40%未満」を対象に最大100万円を支給する。半壊とはいえ、損壊がひどく、修繕費が多額に上るためだ。
この案を基に法改正し、7月に九州などを襲った豪雨災害にもさかのぼって適用される見通しだ。
ただ、課題は残る。
全壊や半壊を判定するのは市町村だ。その判断によって支援を受けられるかどうかが決まるが、機械的な線引きで一律の金額を支給するやり方では十分な目配りができない。支給額も足りない。
被災者は家屋の被害以外にも、心身が傷ついたり、失業に追い込まれたりするなどさまざまな被害を受け、立ち直りを妨げられている場合が多い。
近年、「災害ケースマネジメント」という考え方が注目されている。戸別訪問で一人一人の被害や生活状況を調べ、それぞれに合った支援メニューを提供する。
東日本大震災の被災地で自治体や民間団体が協力して進めた取り組みが各地に広まった。制度として取り入れた自治体もある。
国も今後、支援金だけにとどまらず、被災者のニーズに合わせたきめ細かい対応を組み合わせていくべきではないか。
今回の見直しを、制度の一層の充実につなげてほしい。