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厄介者の火山灰に新しい命吹き込む 鹿児島・植村さん 水墨画の趣で風景や人物描く

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火山灰で桜島を描いた作品を手にする植村恭子さん=鹿児島市で2020年8月22日、足立旬子撮影

 国内有数の活火山の一つで、鹿児島のシンボルとも言われる桜島。噴火に伴い毎日のように空から降ってくる火山灰は、鹿児島市民にとって悩みの種だ。車や洗濯物に積もったり、部屋に入って床がざらざらになったり。ところが、そんな厄介者を“味方”に付けた人が地元にいる。植村恭子さん(37)。「火山灰アーティスト」として、その活動は知る人ぞ知る世界なのだ。

 自宅玄関で、植村さんは右手で火山灰をつまんだ。火山灰といってもよく見ると、まるで黒い砂粒だ。白い紙の上に黒い砂をさらさらと落としていく。多めに落とせば太い線、少なめであれば細い線になる。右手で弧を描いたり、上下左右に動かしたりしてできた線を、さらに指でなぞって濃淡をつけていくと、あっという間に噴煙を上げる見事な桜島が紙の上に浮かび上がった。

火山灰で描いた金魚=作品の写真はいずれも植村恭子さん提供

 植村さんはNPO法人「桜島ミュージアム」の元スタッフ。NPO法人は映像や展示で噴火の歴史などを発信する桜島ビジターセンターを運営しており、植村さんはいわば桜島のスペシャリストの一人ともいえる。

ベルギーでのパフォーマンスも

植村さんが画材に使う桜島の火山灰=鹿児島市で2020年8月22日、足立旬子撮影

 作品づくりのきっかけは、2016年に鹿児島のお隣熊本県を襲った熊本地震。募金を呼びかけるため植村さんは桜島で、熊本のご当地キャラクター、くまモンを火山灰で描いてみた。嫌われ者の火山灰のイメージを変えたいとの思いもあった。画材となる灰はビジターセンターの前にいくらでも積もっている。センターの玄関前のコンクリートに見学者の名前やイラストを描いて観光客らを出迎えた。

火山灰で描いたパンダ=植村恭子さん提供

 特に絵を習ったわけではなかったが、子どものころからノートの隅にイラストなどを描くのは好きだった。最初は文字などが中心だったが、いつしかアートと呼べる世界が開けた。

 描いているうち、火山灰にはさまざまな粒子があることに気付いた。粗い粒は黒く、細かい粒は白っぽい。黄色がかった灰色の粒もある。色の違いや濃淡を利用して桜島のような風景画、人物画などに挑んだ。作品をインスタグラムに投稿すると話題になり、注文が舞い込むようになった。19年からはアーティストとして活動に専念している。

 イベントやワークショップが主な活動の舞台だったが、19年には火山灰をリュックに詰めてベルギーに渡り、現地の日本庭園でパフォーマンスを披露した。ライブでの公演だけでなく、作品を生かした飲食店の内装なども手がけている。「波」をテーマにした作品が「第33回日本の自然を描く展」で入選し、9月11日から5日間、東京・上野公園の上野の森美術館で展示される。

美術館に飾られるのが夢

鹿児島市街地から錦江湾を挟んで雄大な姿を見せる桜島=鹿児島市で2020年8月29日、足立旬子撮影

 鹿児島地方気象台によると、19年に観測された桜島の噴火は393回に上り、平均すると1日1回は噴火している計算になる。鹿児島市の市街地では多い所で、1平方メートル当たり年間1キロの火山灰が降る。同市では桜島のふもとの約4000人を含め、約60万人が暮らす。市内で育った植村さんにとって、火山灰は子どもの頃から身近な存在だった。桜島ミュージアムに通ううち「噴火を繰り返す火山をこんなに近く見られるのは、ここだけではないか」と思うようになったという。

 「見向きもされない火山灰が美しいアートに生まれ変わる。火山灰が科学館や博物館ではなく、美術館に飾られるってすてきでしょう」。技を磨いてふすま絵などにも挑戦し、多くの作品が美術館に飾られるのが夢だ。【足立旬子】

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