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社説

安倍外交の功罪 同盟強化も総決算ならず

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 憲政史上最長となった安倍政権で、外交・安全保障は経済と並ぶ看板政策だった。

 民主党から政権を奪還し、「傷ついた日本外交を立て直していく」と第2次政権を発足させてから7年8カ月。日米同盟は強化されたが、「負の遺産」も残った。

 安倍晋三首相が再登板した時、安全保障環境は、第1次政権のころと様変わりしていた。中国は世界第2位の経済大国になり、軍拡と海洋進出の動きを強めていた。大国化する中国にどう向き合うかが、政権の最重要課題となった。

 このため、首相は保守的なイデオロギー色を封印するようになった。全体として見れば、「実利優先のリアリズム外交」が安倍外交の特徴といえる。

 安全保障面では、日米同盟を強化することで、中国の軍拡に対抗することを目指した。

 同盟強化に最も影響が大きかったのは、集団的自衛権の限定行使などを認める安全保障法制を制定したことだろう。

安保法制が国論を分断

 外交・安保当局には当時、「安保ただ乗り」批判に応えようという狙いが強く働いていた。

 「日本が攻撃されたら、米国は第三次世界大戦を戦う。しかし、米国が攻撃されても日本は助ける必要はない。ソニーのテレビで見ていられる」。トランプ米大統領も就任前から、日米安保条約は「不公平」との不満をたびたび口にしている。長年、米国でくすぶり続けている考え方だ。

 アジア太平洋地域への米国の関心をつなぎ留め、抑止力を維持するには、日本が同盟の負担を増やし、米国にアピールする必要があると、外交当局は考えた。そこに首相の持論である「対等な日米関係」を目指す考えが結びついた。

 しかし、安保法制の制定のために払った犠牲は大きく、弊害は解消されていない。

 歴代政権が維持してきた集団的自衛権についての憲法解釈を、安倍政権は、閣議決定によって一方的に変更した。憲法の規範性は損なわれた。

 幅広く声を聞き合意形成をはかるという、民主主義の土台も崩された。安全保障をめぐり、国論は二分された。与野党や国民の意見は、今も分断されたままだ。

 反対や少数意見に耳を傾けず、対米重視の政策を強引に進める手法は、沖縄の米軍基地移設問題にも通じる。

 日米同盟は強化されたとはいえ、その骨組みとなる安保法制も沖縄の基地問題も、国民の幅広い支持が得られているわけではない。基盤は脆弱(ぜいじゃく)だ。

 「米国第一」主義を掲げるトランプ大統領は、同盟の価値を戦略的視点でなく、金銭的な損得勘定で考える。安倍政権が対米追随に徹しても、トランプ政権は要求を強める構えを見せた。同盟強化の内実は危うい。

 安倍政権の対米外交には、功罪の両面があったといえよう。

停滞目立つ周辺国外交

 一方、周辺国外交は行き詰まりが目立った。

 首相は「戦後日本外交の総決算」を掲げて、日露平和条約交渉や、北朝鮮による拉致問題の解決に取り組んだが、いずれも成果は上げられなかった。

 北方領土問題では「4島」から「2島」返還に方針転換したが、頓挫した。プーチン露大統領との首脳間の個人的関係に頼るだけでは限界があった。

 拉致問題について、首相は「全ての拉致被害者の家族が肉親を抱きしめるまで私の使命は終わらない」と繰り返してきた。前進がなかったことの責任は特に重い。

 日中関係は改善基調にあるが、東シナ・南シナ海への中国の海洋進出による緊張は続いている。

 安倍政権が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想は、米国や豪州、インドとの連携強化で、中国に対抗する狙いが込められていた。だが、安全保障で中国をけん制しながら、経済では対中関係を重視する難しいバランスのなかで、消化不良のまま終わった。

 日韓関係は元徴用工問題などで最悪の状態から抜け出せない。

 安倍政権の外交・安保政策を検証し、教訓を生かさなければならない。対米追随だけでは不十分だ。

 米中の覇権争いは「新冷戦」にも例えられる。米国の対中強硬姿勢が強まるなか、両国のはざまで日本はどんな外交・安保戦略をとっていくのか。幅広い議論を通じて構築していく必要がある。

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